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ヒューフロスト城の奪還を果たした後、冒険者達は当初の目的である仲間との合流も終え、ファーレンハイト簡単なあいさつだけして城を後にした。
脅威は去ったものの、事後処理に追われるであろう彼らの邪魔にならないように。

氷刃騎士団の調査では、結局謎の襲撃者の発見には至らなかった。氷の結界が破られたことで退却したのだろう、と結論付けられた。
手口や結界術の性質から氷妖至上主義と呼ばれるテロリストの犯行ではないかという見解が強く、両騎士団や政務局は彼らに対するより一層の警戒誓った。
結界に対抗できる力が国王にしか無かったことに関しても、停滞気味だった氷妖の遺産の技術解析を含め氷妖に対する認識を深めること急ぐと結論が出される。
最も、これに関しては騒動が終わってからそれなりに時間を要する決着だったが。



■ ヒューフロスト王城西棟宰相執務室

現場を治める一通りの命令を下し、氷刃騎士団長や情報局長などとのちの会合の約束を取り付けて、騎士や冒険者の手前気丈にふるまってはいたが疲労困憊しているファーレンハイトを自室に送り届けてからミッドガルドが宰相執務室に戻ると。
はたして部屋にはすでに人が居た。入口の真正面にある執務机には、夜藍の髪に白衣を来た男が着席していた。
「おっかえりー、マリオ。お疲れ様」
「久しいですねイス。今は《白蟻》と呼ぶべきでしょうか?」
「イスでいいよ、僕と君の仲だろう?」
「…騎士団には顔を出さなくても良いのですか? 妙な勘繰りをされて私にまで火の粉が飛ぶのは御免ですよ」
「酷いね、君のが雇い主なのに」
笑いながら、イセイルは席を立ち、入れ替わるようにミッドガルドがその席に着いた。
「元々僕は今日部隊に居るわけじゃないから、頭数にカウントされてない。遺跡の調査部隊の一員として、城には来てるんだから。だからこそ今日は会う約束してたんじゃないか」
すぐ横で髪を弄んでくるイセイルを手で払いのけ、ミッドガルドは嘆息する。
と、廊下からズカズカと大きく響く足音が聞こえてきたかと思うと、勢いよく執務室の扉が開いた。
扉を開けたのは緑色のローブに身を包んだ宰相私兵《七節》、後に続いて《蚕蛾》と王甥トリス=トリスが部屋に入ってくる。
「てめぇイセイル!! 俺の潜入先を潰す気か!」
『七節、素が出てるぞ』
「…!! ―――ごほん、私もお前も、危うく氷妖であることがバレるところだったんだ。氷刃騎士は案外目ざといのが多い。お前一人が破滅するのは構わんが、私を巻き込むな!」
「さっきマリオにも同じようなこと言われたんだけど、君ら友達甲斐がないね」
むくれるイセイルの顔めがけて、七節は白い箱を投げつけた。顔を一度バウンドして胸元に落ちた箱を、イセイルは手で受け止める。箱はイセイルが冒険者たちに案内していたオルゴールだった。
「冒険者の一人が持っていたから返却願った。またグレイスドラゴンが出てきたら事だ。お前が責任を持って返してこい!」
言うだけ言って、七節は踵を返す。
「あれ、もう行っちゃうの?」
「私にはこれから氷刃騎士としての仕事がある。あまり長く姿を消していては怪しまれるからな」
「あ、そ。今回の調査で一人、同胞が見つかったからさ、近く弔いをしたいんだ。君も都合付けといてよね。これは墓守の村に居た僕らの責務だ」
「…把握した」
七節が立ち去ってから、入口近くに控えていた蚕蛾が前に出てミッドガルドへの報告をした。鍬形は外政局の会談が終わってからも引き続き外政局長に付き探りを入れること、百足はベリルを送るついでに今回の術解析結果をシュバルツシュタインから受け取りに行くこと、鍬形と蟷螂は氷刃騎士団本部から戻り次第騎士の目を盗みつつ北棟の調査をすること、ペルシスはカレルの心配も含めて内政局にしばらく付く旨を話す。
『恐らく、調べても北棟で手がかりが見つかることも無いでしょう。せめて白蟻が刺客を始末していなければ、何か聞き出せたかもしれませんが』
「いっやあ、無理じゃない? もしも誰かと会うつもりだったとして、僕がぐだぐだしてる間にその人は逃げてるでしょ。氷漬けになってたら会話以前の問題だし、あの手の自分が正しいと思ってる系の輩は痛めつけても口割らないし」
『殺した本人が言っても言い訳にしか聞こえないな』
「仕方ないじゃないセリスちゃん。僕一回殺されてんだよ? 殺したなら殺されても文句言えないでしょ? 」
『私は蚕蛾です。いつまでもその名で呼ぶのは辞めてください』
「北棟には倉庫がたくさんありますから、所蔵されている物を狙っていたのかも。城には氷妖縁の物もたくさんありますし。あとは…地下牢に居る犯罪者、でしょうか」
『今は地下牢には誰も収監されていません。もとより、あの場所に入るのは死刑と同義です』
「結界はグレイスドラゴンの仕業ですが、城に侵入されていたことに変わりはありません。彼らの脅威に関しては、我々だけで追う必要もない、近く六人委員会や評議会でも議題に上ることでしょう。あまり下手に深入りして、我々が氷妖であることを悟られることの方が危険です」
机の上にある書類をまとめながら、机の端に置かれたオルゴールに目をやりミッドガルドがのたまう。
「そのオルゴールへの処置はあなたが行ってください、イスベル・イセイル。所有者登録をしておけば、むやみやたらにグレイスドラゴンが召喚されることもないでしょう」
「そうしとくよ。―――――ところでさあ、マリオ?」
「…なんでしょう」
覗き込むように顔を見、微笑むイセイルに、ミッドガルドは極力合わせないようにしていた視線を仕方なく合わせて向き合った。
「僕って私兵でも非常勤で専門技術以外は基本手を貸さない《蟻》なんだけど、今回の件って条件外労働じゃない? 手当欲しいなあ」
「何がお望みで?」
あまり意味をなさない問いをミッドガルドは口にする。イセイルがミッドガルドに要求することなど、いつも決まっているのだ。
「久しぶりに、マリオの作ったガトーショコラが食べたいな!」
「はいはい、次の休みにでも作りますよ」
「材料はちゃんと用意して私邸に贈っておくよ。インテグラ中探して、頑張っていいものそろえるね」
『その労力で買えばいいだろうに』
「いやいや、いろんな店食べ比べたけど、ガトーショコラはマリオのが一番おいしいんだもの。甘いものを食べたいときにはインテグラにあるカトルカールのミルクチョコクリームケーキのがいいけど」
「あれおいしいですよね! チョコ系なら、マジャーナのラズベリーショコラも好きです」
『トリス=トリス様、乗らないでください』
会話が雑談に移行したところでミッドガルドは視線を外し、再びため息を吐いた。
死ぬほどの損壊からも復活するイセイルの肉体は、代償としてなのか大量のカロリーを必要とする。ゆえに彼は非常に大食いで甘党で、かつグルメだ。ミッドガルドとしてはその超再生能力をかってわざわざ私兵として手元に置いているのだから、彼のワガママには出来る範囲で付き合ってはいるが。
視界に入った白い箱に気づき、ミッドガルドはそっと手を伸ばした。ふたを開けるとシンプルな装飾と共に刻まれた文字が目に飛び込む。
久しく呼ばれていなかった懐かしい呼ばれ方をしたことを思い出して、ミッドガルドは声に出さずに微笑んだ。



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