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01 2009 / 03
イベントにしようと思ったのですがイベントっぽくしきれなくて小話になりました。
ロアが勝手に喋ってる何かの物語を、立ち止まって聞いてみるとこんな感じだった、というような。
テオかジョウガがパーティに居るときに聞くとイベントがちょっと深くなる。

書いているとき、テオフィル以上にロアノートの方がなんだかすごい感じになってきそうでアレでした。
ロアは異様に勘のいいうっかりさんでいいんだけどな…。

とりあえず言える事。
ライトセクハラとかラッキースケベとか大好きですから!!
はい。





これはかつて大陸にあった国の話。
もう神の記憶にもない御伽噺。


その国には若くして賢王と呼ばれる王がいた。
民を思い、民に思われ、豊かでなくても平和がある国だった。

そんな王にも、唯一つ家臣たちに咎められることがあった。
それは彼の愛。
彼は国の底に沈む遺跡を研究する学者に惚れていた。
全霊を懸けて遺跡発掘に取り組む学者を心底愛していた。
学者も、自らの研究を嬉しそうに聞いてくれる王を愛した。

だが所詮はただの学者。身分違いの恋を家臣たちは口々に非難した。

王はそれでも諦めなかった。
彼女の研究は国にとって有益なものであり、彼女自身も素晴らしい人物であると。
いずれ家臣たちにも理解してもらえると思っていた。

だが学者は死んだ。遺跡の足場から落ちて死んだ。

学者を一番に発見したのは王だった。
学者の足に刺さった矢に戦慄し、
腹を庇うようにうずくまる姿に絶望した。
王は三つの愛するものを失った。

王は豹変した。大切に思っていた国が愛するものを奪った事が許せなかった。

誰の言葉も聞かず、亡くしてしまったものを取り戻す事に全てを注いだ。
この時になってようやく王と学者の愛の深さに気づいた家臣たちだったが、もう手遅れだった。
神の術、悪魔の術、あらゆる魔術を調べ上げ、王はついに亡くしてしまったものを取り戻す術を見つけ出した。
国の全てを犠牲にして、王は愛するものを一つだけ取り戻した。

そして国は姿を消した。大陸の上から跡形もなく消え去った。



語り終えて、ロアノートは一息吐いた。
話を聞いていたものが拍子抜けしたような声を上げた。
「…それで終わりですか?」
「うん、終わり」
質問に短く答える。語り手の語りとしての話はここで仕舞いだった。
「でもね、実はこの話、異幕があるんだよ」
「異幕?」
「そう。続きじゃなくて、同じ時系列の別の話。でもこれはちゃんとした話じゃないから仕事じゃ話せないんだよね」
「そうですか…。すこし残念です」
「そんなに気になる?」
聞き手が微かに揺れた。
揺らぎを肯定と受け止め、ロアノートは小さく笑った。与言師としては言葉を求められることは素直に嬉しい。
「じゃああらすじだけ。王様にはとても仲のよい異国の剣士が居たんだ。旅人だった剣士は王様の友人と結婚して王様と知り合い、王様の護衛になった。家臣の誰もが反対した王様の恋も、剣士とその妻だけは応援していた。
でも剣士の妻は子を産むのと引き換えに死んでしまったんだ。悲しみに暮れた剣士は、他の家臣たちの不穏な動きに気づけなかった。
そして悲劇が起こってしまった」
息継ぎをする。
「国に裏切られ、愛する女性と将来生まれてくるはずだった子供の二人を失った王様はどうにかしてその内の一つを取り戻そうとした。亡くなったものは戻らないと剣士が言っても聞かなかった。
元々魔術に精通していた王様が失くしたものを取り戻す術を見つけた時も、剣士はそれを使うことを反対した。術には国が滅ぶほどの犠牲が必要だったから」
息継ぎ。
「とうとう術を使った王様を、それでも剣士は止めようとした。家臣たちの不穏な動きを気づけなかった事を責められ、お産で妻を失った悲しみを突きつけられても剣士は折れなかった。
そして、もはや言葉が通じないことを悟ると、王様を守ると誓った剣を王様に向けた」
息継ぎ。
かと思われた沈黙がいやに長かったので、聞き手が堪えきれずに尋ねた。
「それで?」
「終わり」
「……え」
「続きが無いんだよね。色々な伝承とか古典とか探してるんだけどさー」
やれやれと肩をすくめるロアノートに、聞き手は呆れたようだった。
「だから言ったでしょ、ちゃんとした話じゃないって」
「内容がうっすらとした感じなのかと思いまして」
「あはは、そっちのほうがマシだったかもね」
ロアノートが笑っても聞き手は釈然としないようだった。うーんと小さくうなる声を聞きながら、ロアノートは続けた。
「続きっぽいのを辿っていくとさ、その剣士、結構最近まで生きてたことになっちゃうんだよね。それっぽい話が大陸各地にあるの。この王様の話は、500年くらい前の話なのにね」
「………」
「人間の国の話だから剣士も人間だと思うけど、フツーに考えてそんなに生きられる訳ないでしょ? だから続きって言えなくて。ただ…」
「ただ?」
「王様が見つけた失くしたものを取り戻す術―――――それが語り手にも有名な《紅の目の神》や《紅い薬》のことなんじゃないかって言われてて、これには人に不老不死を与える力があると云われている。もしかしたらこの話に関わった者が、今でも生きてるんじゃないかってね。調べているとそう思うこともあるよ」
「それは大それた話ですね」
「まさしく御伽噺でしょ?」
ロアノートがにやりと笑うと、聞き手も同じく笑ったようだった。
短い別れの挨拶を交わしロアノートが去っていく後姿に手を振っていると―――
ふと聞き手は引き返してきた。


長く話を聞かせてもらった語り手の男に、テオフィルは心ばかりの謝礼を渡そうと駆け寄った。
「あの、これ…。お話面白かったです」
物を差し出された気配に盲目の男は首を傾げた。が、すぐに思い至ったようでぶんぶんと首を振る。
「あ、いいよそんな。半分は仕事未満の話だし」
「でも職業ですから、報酬は貰ってしかるべきでしょう」
「そうだね。じゃあ、ありがとうございますー」
あっさりと手のひらを返した男に苦笑しつつ、テオフィルは金貨の数枚入った布袋を差し出した。一般の感覚から言ったら多い額だろうが、テオフィル自身持っていても仕方のない物だ。多すぎる所持金は身の危険に繋がることもあるが、のん気に話しているこの男がただのん気なだけでないことはなんとなく解る。
手の平を見せ謝礼を受け取ろうとしていた男の手が、突然翻りテオフィルの腕を掴んだ。
とっさに腕を引いたテオフィルだったが、男の握力は思いのほか強く反動で男に倒れこんでしまった。
「…っっ!!?」
「あれ? ちゃんと人の形してる」
「何の話ですか!?」
テオフィルはぱたぱたと触ってくる男の手を慌てて振り払った。目が見えないとは言え、やり口が唐突過ぎる。
男はあっけらかんと答えた。
「いや、話してる間ずーっとね、君がなんかゲル状というかゾル状というか赤いでろでろしたものに感じたんだよね。でも触ってみたら普通の人だったからちょっとビックリして」
「訳がわかりませんよ! 第一、盲いているのにどうして色が解るんですか」
「色毎にそれぞれ違った感触があってね、それで大体解るんだ。感覚器官てどれかが欠けてたら他が補うように発達するって云うでしょ? 僕結構自分の感覚には自信があったんだけどなー」
悪気のかけらも無く言う男に、怒りを通り越してただただ呆れた。ひとまず立ち上がりたい旨を話すと、男はようやく気がついたのかテオフィルの肩や腰に回していた腕を離した。
今度こそ本当の別れをと、テオフィルは男に向かって一礼をした。


礼をする少年は確かに人間の形に感じた。頭を下げて、上げる空気の流れ。踵を返して歩きだす地面の振動。
徐々に遠ざかっていく背中の気配にまた赤いでろでろしたものが混じった。影のように付き従う―――――いや、あれは。
「ねえ君。不老不死なんてあると思う?」
でろでろが小さく震え、立ち止まった。
「不老不死の人間なんて居ませんよ」
「………そう」
再び少年の気配を戻し、聞き手は去った。
ロアノートは大きくため息を吐いて、少年とは反対の方向に歩き始めた。
いくらなんでもあの赤いのは人間じゃないよなと思いながら。



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