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23 2017 / 10
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14 2009 / 02
公演はしてませんが、サーカスのお話。
一部の団員をお借りしました。

ニュアンスとしては、夜の神に仕えるものは“眠れない”のではなく“眠らなくても平気”ということです。
必要性の有無なので、気分的に眠ることもあります。レッツご都合。





半月ほど前、大雨で上流に架かる橋が流されてしまったのだと宿屋の主人は話していた。
「被害が川岸だけだったから町では気がつきませんでしたが・・・確かに酷いですね」
川沿いの街道を下流に進む道すがら、円はつぶやいた。土手の上にある街道から見た川原は背の高い草がなぎ倒されており、木の幹の中ほどに泥水に浸った後が見える。川の中には流れに似つかわしくない大きくて角張った石が幾つもあって先の増水の威力を物語っていた。
街道を馬車で往く『ラビットサーカス』の一団は、川の対岸にある街に向かう途中だった。街に向かうには川の上流にある橋か遠回りになる下流の橋を渡らなければならないが、上流の橋が流されたことによりルートは必然的に下流の橋になった。山を越えるという近道もあるが、サーカスの荷物を考えると文字通り荷が重い。
何よりも団長の「急ぐような旅でもあるまい」との一言により迂回ルートが選択された。
「…その団長は今どうしてます?」
「三つ目の馬車で内職してるよ、いつもどーり」
「そうですか…」
連なる馬車の先頭で手綱を握る円は、ホロから顔を出しているヒースに尋ねた。
馬車は三台が縦に連なっており、先頭にはテントと団員の私物諸々と馬と御者、二つ目には他の団員と猛獣など、三つ目には衣装などの備品と生活備蓄が大まかに積まれている。御者役でない団員は二つ目の馬車でまとまって待機することになっているが、話し相手にと今回はヒースが一つ目の馬車に乗っていた。
「ああいうのはそっとしとくのが一番だって。玉兎ってばツンデレー。ん、裏デレ?」
「そんなんじゃありません! ただ少々責任が…」
円が言いかけると、突然後ろから乾いた音がして馬車全体が揺れた。慌てて手綱を引いて馬を止めると、視界の端に転がっていく車輪が見えた。
馬車が壊れた? 車輪が取れたとしたら特に異常のない一台目ではなく、二台目か三台目ということになる。
「おいおい何があったんだ!?」
「大丈夫ですか皆さん!?」
ヒースと円がすぐさま馬車から飛び降りて後方を見ると、二台目のホロから他の団員たちが顔を覗かせていた。衝撃に驚いたのか辺りを見回している。
「………?」
軽く見渡してみた限りでは、後続車に異常は無かった。車輪が外れている車など無く、道を見ても馬車に引っ掛かりそうな障害物も見受けられない。
ヒースと円は顔を見合わせた。「見たよな?」「見ましたよね?」同時に尋ねる。
百歩譲って車輪が転がっていったのは見間違いだったとしても、馬車が揺れた衝撃は確かに感じたはずだ。二台目に乗っていた団員も気づいたということは、それまで勘違いということはあるまい。
だが見たところ馬車に以上は無く。
「どうすんの、リーダー?」
「そうですね…」
見た目異常は無くとも、一通りの点検はしなければならない。
時刻はそろそろ午後のお茶の時間だ。陽気はまあ悪くはない。
「休憩しましょうか」

馬車を道の端に避けて、円が馬車の点検をする間休憩を取る事になった。
アリスと十六夜は馬車の外に出て川原で待機、満は先の事で落ち着かない猛獣たちをなだめさせ、呼びかけても出てこなかった伯爵は放っておかれた。
ヒースも手伝って馬車の点検が行われたが、特に問題になりそうな箇所は無かった。
「どゆこと?」
「聞かれましても…」
健常な馬車を前に二羽の兎が立ち尽くす。自分の感覚を疑うような事はしたくないが、目の前にあるものも疑いがたい。まさに狐につままれたような気分と呼ぶに相応しく、いっそこの辺で狐でも出てきてくれればいいと二羽は思った。
「円、ヒース」
呼ぶ声と共に服の裾を引かれて二羽は振り返った。馬車の外で待機していたアリスと十六夜が川の方を指差していた。
「花がいっぱい咲いてるの」
「かわの…とこ…」
「花?」
指差す先を見ると、なるほど川岸の一部を染めるように淡いピンクの花が咲いていた。土や下にあるであろう葉茎が見えないほどの量だ。穏やかになった川の流れに映える美しい光景が、土手の下に広がっていた。
(………ん?)
土手の下、川岸のぎりぎりで咲き誇る花は周りの状態もあり際立って見える。
“周りの植物は大雨ですっかり流されてしまった”のだから当然だ。
不意に風が吹いた。先程までは無風に近かった街道に吹いた風は川岸に咲く花びらを舞い上げ、むせかえるような甘い匂いと共に馬車の間を吹きぬけた。
頭の奥が重くなる匂いと舞い散る花びらの中で、円は《狐》が何であるかを理解した。

呼ばれたような気がして伯爵は衣装を縫う手を止めた。
耳を澄ますと外は静かだった。『内職』に集中すると周りが見えなくなることを円によく窘められるが、理解されているだけあり重要な事柄で呼ばれるときは数度繰り返される。一度しか呼ばれなかった場合はたいした用ではない。
だが、なんとなく静寂が耳について伯爵は馬車を出た。
ホロから顔を出して辺りを見回し、馬車から降りてから前に連なる車両を見る。2両目の中を覗くと団員と猛獣たちが大人しく寝ていた。
1両目のホロから顔を出して寝ているヒースと手綱を握ったまま眠っている円を見て、ようやく馬車が止まっていることを理解した。馬車を引く馬たちまで眠っている。
いくら天気が良いからといって兎から猛獣から全員そろって眠るほどではない。かといって催眠系の攻撃をしてくるヤバそうなモンスターの陰も見受けられなかった。というか居たらとっくに気がついている。
不意に風が吹いた。風は川岸から淡いピンク色の花弁と甘ったるい匂いを連れて馬車を吹き抜ける。そして、風に混じって声が聞こえた。
『伯爵さま、“呼ばれ”ませぬように』
「分かっている」
風の声を阻むように高い少年の声が発せられた。伯爵はそれに応えたが、周囲に伯爵以外の人の影はなかった。
伯爵は土手を下りて花の絨毯を踏みしめた。靴底越しに伝わる感触は“思ったとおり”硬い。風の声が強まった。

誰か、誰か、此処へ、私に、誰か、……

「ああもう分かった煩いな」
風の声に文句を言いながら声のする方へ伯爵は歩いていった。
花畑の奥に、花に埋もれながらキラキラと日の光を反射している何かがある。
その何かに大体の見当をつけてから、伯爵は何かを杖で掘り返した。
からんと小さな音を立てて丸い鏡が花畑に落ちた。
「《夢幻ノ見鏡》…こんな処で見るとはな」
拾い上げた鏡の泥を払いながら呟く。簡素な飾りの青銅鏡に見えるこれは、有名と云うほどではないが力のある魔術道具だ。その鏡面は人の夢を映すという。
「宿屋の主人が橋が流される直前に街を出発した古物商が居たと言っていたが…その古物商の持ち物の一つなのだろうな。道具としての役割を全うしたい気持ちもワカランでもないが、うちの可愛い団員たちは返してもらおうか?」

誰でもいい……、…誰か…… …

私に、夢を…… !!

鏡の叫びと共に花畑を巻くような風が吹き荒れた。音は無く、ただ皮膚と舞い上がる花びらでのみ確認できる風は、ようやく自らの存在に気づいてくれた者を囲うように吹いていた。
「我輩にとっては“今こそが夢幻の世界だ”。お前の求める“眠りを伴う夢”を、我輩は持ち合わせおらん」

…― ―――――っ っ!!?

鏡は声とは呼べぬような高く鋭い断末魔を上げた。風が停止し、周囲に咲いていた花は急に色が褪せる。
夢へと誘う花畑が消え去り、後には土の溜まった川原が残された。
『ご無事ですか、伯爵さま』
「うむ。彼奴にとっては相手が悪かったな」
大人しくなった鏡を伯爵はひっくり返したり掲げてみたりして観察した。今はただの丸鏡だった。
再び少年の声が伯爵の背後から響いた。
いつの間にか、伯爵のすぐ後ろの空間に身なりの良い少年が物理法則を無視して浮かんでいた。少年が山高帽の端を上げると見え隠れする亜ヤギ科の角が、彼が悪魔であることを解り易く表わしていた。
『当然です。私にも眠らせることの出来ないあなたさまを、鏡如きが眠らせるなど出来る訳がない』
寂しいよー、と首に腕を回して絡んでくる夢魔の少年を引き剥がしながら、伯爵は馬車へ戻る。
「さて、マドカたちを起こさねばな」
『うう…ヒューゴは私よりもあのウサギたちの方が大切なのですね』
「当たり前だろう」
『私など、あなたさまのためなら魔界に置いてきた72の軍団を率いて来る事すらいとわないというのに』
「そんな物騒なもんいらん」
『うえええぇぇぇえええぇぇええ』
奇妙な泣き声を残して少年の実態が消えた。
あの泣き声は羊を意識したものなのだろうか、いやそれよりも言い過ぎたか…? 考えてからそれが特に意味の無いものであると気づき、伯爵はため息を一つ吐いて御者をしている兎の肩を叩いた。

団員達が起こされて、状況を説明するために一旦車外に集合した。説明すると言っても皆起こされた時には大体の状況を把握しており、元凶となった鏡のことが主な話題となっていた。
そして、説明されるまでもなく鏡のことまで思い至っていた円は団員たちが集まる輪の中心で伯爵に向かって頭を下げて座っていた。
「夜の神の眷属たるワタクシが眠りの術に囚われるとは……我が身ながらふがいなさに涙が出そうです。団長にはご迷惑をおかけし、まこと申し訳御座いません」
「そこまで謝られると逆に不安になるが…。と云うかマドカの『余所行き用』の言葉遣いが向けられるのは珍しいな」
「普段は謝る側と謝られる側が逆だもんね」
慣れないものへの対応に伯爵は困惑していた。
円が土下座して謝っているのは伯爵への申し訳なさもあるのだろうが、夜を統べるものに仕える兎としてのプライドに関わることなのだろう。自らの意識はもちろんのこと、呼び出されて遣われるものとしてラベルを貶める失態を犯してしまったことが許せないのだ。
誇り高い月の神の最も近くに居る者なら、尚更。
「あまり気にするなマドカ。夜の眷属は月に近ければ近いほど眠りを必要としなくなるのだろう? 免疫の無いものに負けるのはさほどおかしなことではない」
「はい……以後気をつけます」
「それでいい」
伯爵はぽんと円の頭に手を置いた。そのままわしゃわしゃすると「ちょ、やめてください!」といつも通りの反応を貰い、少し安心する。
「ではそろそろ出発しようか。このままでは明日中に次の街に着かないかもしれんからな」
はい、と団員達は返事をして各自の持ち場に戻っていった。
程なくして馬車が再び動き出す。
下流に掛かる橋までは、まだ少し距離があった。


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ちょっとだけ伯爵話を…と思ったら、思った以上にちょっとだけなってしまいました。
伯爵は月の神から兎たちを与えられた代わりに眠ることが出来なくなり、夜に暇を潰すために内職=衣装全般の裁縫を始めましたという話。
夢魔はハロウィンイラストに出てきたチープトリックのことです。主人の眠り=夢を奪われてしまい拗ねているようです。


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