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このブログは企画系創作作品をまとめたブログです。主更新はオリキャラRPG企画になっております。
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バトンで調子に乗って書いてみました。
ですが、バトンの性別転換ジョウガとは少し違います。
バトンのは実際のとほとんど同じ性格であるのに対し、これは女性だと想定して完全に人生を組み直してます。
バトン取り組み中にも考えていた案ではあるのですが…なぜ出てこなかったのかは、話の通り。

一応、
ジョウガ→そのまま
テレス(嫁)→テオフィル
テオフィル→…
に、改名されてます。嫁さんは元々テレス教会という教会に拾われたからテレスという名がついていました。






久々に訪れた街は、ほんの数日しか滞在した事がないはずなのに無性に懐かしく感じた。
故郷によく似た雪の降る街。もしかしたら故郷になったかもしれない街。
ふっ、と女は小さく笑った。
(こんなときにこんなことを思うなんて…)
大通りから横道に入ってすぐにある、たいして大きくもない建物の屋根には十字架が掲げられていた。
聖テオフィル教会―――――思うところの多いこの場所で、過去に決着をつける為にジョウガは教会の戸を叩いた。

出てきた男は五年ぶりだというのに、全く変わっていないように見えた。
「はい、どちらさまで―――――……」
「お久しぶりですね、テオフィル」
「………ジョウガ、さん…?」
教会と同じ名前の男は、驚きのあまりかすれた声でジョウガの名を呼ぶと、挨拶よりも先にジョウガの身体を抱きしめた。
「ずっと…もう一度お会いしたいと思っておりました。あなたを想い、何年も…」
「ふふ、手が早いのはあいかわらずですね」
よしよし、と子供をあやすようにジョウガはすがり付いてくる男の背中を叩いた。
昔は同じくらいの身長だったはずなのに、今では自分がテオフィルの胸に顔をうずめる形になっている。
「またこの街を訪ねて来てくださるなんて、夢のようです」
「夢ではありませんよ。……どうしてもあなたに会わねばならなかった」
すがる男を引き離し、ジョウガは真っ直ぐ前を見据えた。光が入ったときのみ色味を帯びる深い青の目で。
「会李」
短く呼ぶ。すると、声に応えるようにジョウガの後ろから小さな頭がちょこんと出た。肩口で切りそろえられた細やかな砂色のブロンドに、青い大きな瞳が今は怯えたように揺れている。5歳ほどになるか、少女だった。
「ジョウガさん、この子は…?」
「会李よ。可愛いでしょう。この髪の色なんて、犬猫みたいにあなたにそっくり」
極上の微笑みを浮かべ、ジョウガは宣う。
そして長い沈黙。
「……………え?」
砂色のブロンドを持つ男は、ようやく一音搾り出した。
ジョウガは爆弾発言をしたときの上品な笑みのままだったが、細められた目に宿る光は雪国の朝よりも冷たかった。
「聞こえなかったかしら? 憎たらしいくらいにあなたにそっくりですのこの子。5年前のこと、よもやお忘れではありませんよね、テオフィル?」
「……まじすか」
「まじですよ。ほら会李、これが『お父さん』よ。ご挨拶なさい」
「あ、は…はじめまして…」
ジョウガに促され、会李はジョウガの袖を握ったまま会釈をした。
「ええと、はじめまして。エリ…ちゃん。僕が君のお父さんで…」
孤児院を営んではいるものの、自分の子供と対するのは初めてなため要領を得ない。そもそもジョウガと旅をしてきた彼女に、父親という概念が解っているのかどうか。
だが、見れば見るほど会李は毎朝鏡で見る男にそっくりだった。髪目の色味から丸い線を描く目の形、妙なクセの就いたか髪質まで。
テオフィルはしゃがみこみ会李の頭に手を置いた。手を通して会李の震えが伝わってきたが、数度撫でると震えはおさまった。「お父さん…?」と不思議そうに呟いている。
「病弱なくせに種は丈夫だったようですね。ああ、病弱だからこそかしら」
「………ごめんなさい」
若気の至りに深く後悔しうなだれるテオフィル。「だいじょうぶ、お父さん?」と心配してくれる会李を愛おしく思いつつ、疑問を口にした。
「ジョウガさん、…ご用はなんでしょうか」
ただテオフィルと会李を引き合わせるだけならば、こんな仰々しい話し方はしないだろう。現に対面を果たした父子を前にして、ジョウガは重い雰囲気を変えてはいない。
「責任を取って欲しくて来ました」
ただ一言。何の感情も込めずにジョウガは言った。
予想できた一言だった。何をされるのか、何をすればいいのか。淡い期待と淡い諦観が同時に浮かんだが、きっとそれはどちらも彼女にとってはぬるいものだろう。
「それは…一緒に暮らしましょうとか、そんなことではないんですよね」
「ええ、もちろん」
ジョウガは淡々と言葉を紡いだ。
「あなたを後悔させるために参りました。この子のことを知って、これからの人生全てをもう二度と会うことも無い私とこの子のことを考えながらすごせばいい。そう思いましてね……でも、」
一息つき。
「やめておきますわ」
終わりの宣言が為された。
「行きますよ会李」と声をかけられると、会李はテオフィルの傍を離れて母の手をとった。ジョウガは「それでは失礼致しました」と礼をした。
立ち去ろうとするジョウガの肩をテオフィルはとっさに掴んだ。
だが、身体を止める事は出来ても彼女の心を留められるような言はとっさには思いつかない。
「忘れなさい」
言葉を捜そうと必死になっている頭にジョウガの声が突き刺さった。
出来ない、否定よりも先にジョウガが続ける。
「流れ者の女のことなど忘れてしまいなさい。まだまだ先は長いのだから、いずれ忘れられる時が来るわ。あなたにはこの国の女王様や、素晴らしい学者のお友達が居るのでしょう」
「ジョウガさん…もう会わないって…?」
「もうこの国には来ない。これが最後………それでも…、あなたのことは嫌いではなかったわ」
ジョウガが一歩踏み出すと、テオフィルの手は肩を引き止めることもなくするりと抜けた。
振り返ることもなく母子は教会を出て行った。


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