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02 2010 / 01
贈り物イベントをひと段落させるための話です。

始の方を夢の中の話であると表現するために、普段と若干書き方を変えてあります。
つか自分が一人称書くとあんな感覚文になるんです…。
正直始の方は読んでも読まなくてもどちらでもいい感じになっておりますが……《紅い薬》の見ている夢なので、薬のことを知る一要素にでもなればと思います。



一度だけ、おかしなことを考えたことがある。
もしもテオフィルが私に贈り物をするとしたら、何を贈ってくるだろうかと。
最良でないものを考えるのは不毛だ。
私と云う者を知った上で、何を贈るか。
《紅い薬》自体を贈ること有り得ないだろう。それは薬が人の手に渡ってはいけないものだからという意味ではなく、私自身の心情を思えば。
だから恐らく―――――私が欲しいのは    だ。

それはテオフィル自身にしか与い得れない。
故に彼から贈られることを望む。

そこまで考えて馬鹿馬鹿しいと思った。
得られる筈が無いからだ。
無い筈だと思っていた。



降り注ぐ紅い光の中に、記憶の中の少年の姿を見出す。
染めたように黒い髪、塗ったように白い肌、輝く紅の目を見出そうとして―――――彼が、自分に背を向けていることに気付いた。
距離は5,6メートル程。一足では縮まらない。
むしろ、この距離を持って現れたということは、これ以上は近づいて欲しくないのだろう。
「まさか、夢に現れるとは思いませんでしたよ。薬は本当に万能なのですね」
その場に佇んだまま、ミッドガルドは呼びかけた。テオフィルは後ろを向いたまま微動だにしない。
「これは薬とは関係ありませんよ。誰しも此処に来ることが出来ます。ただ、此処のことを知らないだけで」
「ということは、今後私は自由に行き来出来ると?」
「此処を正確に理解できれば、もちろん。でもあまり来過ぎると戻れなくなりますよ?」
「それは恐ろしい。ここは何か巨大な生物の胃袋の中のようですね」
「まあそんなものですね」
すらすらと進む会話に、ミッドガルドは奇妙な感覚を覚えた。今まで、テオフィルとこんな風に会話をしたことは無かった。こんなにも長く追いかけっこをしていると云うのに。
「あの紅い海が、《紅い薬》ですか」
「多くの人はそう呼びます。でもあれは不完全です」
「不完全…」
反芻する。言葉の意味が重く響いた。完全でないことはなんとなく感じていた。だが、あれで完全であって欲しかった。
「テオフィル、」
「はい?」
聞きたくはなかった。
でも、訊かずには居られなかった。
「完全な《紅い薬》とは何ですか?」
「それは―――――」
テオフィルが振り返る。音も無く、地面の方が回転したのではと錯覚するほどの滑らかな所作で。
音を発するために開きかけた唇をじっと見つめた。

訊かなくても知っている。
確信は有る。
確証が無いだけで。

唇が紡ぐ言葉を読む。

テオフィルならば確証出来る。
何故なら彼は、


――――― 自らの意思を持ち、自らを決めることが出来るのだから。



唐突に見えたのは普段と変わらない執務室だった。だが、微妙に位置が違う。
執務机の側面が見える。この位置は応接用のソファの上か。身を起こすと、掛かっていた毛布が落ちた。
ゆっくりと斜め後ろに目をやると、引きつった顔で固まっている七節が居た。
「…これは、貴方が? 翠蓮雀」
「あ、ああ…」
ギクシャクとした様子で七節が肯定する。
「マリオ、お前寝方もアレだが、起き方も普通に出来ないのか?」
「………夢を、見ました」
答えを求めるつもりは無いが、さっぱり答えになってない切り替えしに七節は呆れながら、ミッドガルドの言葉を促した。どんな夢だ? と。
「答えたくありません」
「言い出しといてそれか」
七節の呆れ方がひどくなった。水でも持ってこよう、と言い視界から七節が消える。
ミッドガルドは夢の内容を思い出していた。
紅い海、黒い空、白い砂浜…。
そして最後のテオフィルの言葉。
音声としては聞こえなかったが、言っていることは確かに解った。
彼だけが持つ確証の言葉。ミッドガルドが想像していたものと、寸分違わぬ意味の言。

完全な薬とは、自らの意思を持ち、自らを決めることが出来るものである。

私は彼に、酷いことを言わせてしまった。
俯くミッドガルドが深く後悔していたことに、水差しを持ってきた七節が気付くことはなかった。



雪が降りしきる森の中で、テオフィルは木々の隙間から、空を見上げていた。
こんなにも雪が降っているというのに、空には雲ひとつ無く星が瞬いている。
ゆっくりと、じっくりと巡る星の一つが、定位置に来た時。
大陸は新たな年を迎えた。
これでファーレンハイトと約束した『期限』は過ぎた。
親しい人に贈り物をするという、大陸の習慣を行う時間も終わったということだ。
最後の最後でテオフィルは一つの贈り物をした。
それは決して善意からではなかった。

悩めばいい。悩みぬいて、それで乗り越えられなければ、彼に《紅い薬》を得る資格などない。

ふとテオフィルは、自分がミッドガルドに薬を得て欲しいのかそうでないのか解らなくなった。
だがすぐにそれが無意味な疑問であることに気付く。
それは自分が決めることではない。
ため息とともに笑みをこぼし、テオフィルは歩き出した。


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