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このブログは企画系創作作品をまとめたブログです。主更新はオリキャラRPG企画になっております。
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一応時間軸的には贈り物企画の期間内の話ですが…、ぶっちゃけ贈り物してません;
ちらっとポーラさんが贈り物をしてるような気がしないでもありませんが。
実はクリスマスに合わせて上げたいなあと思っていたのですが諸事情により遅れました。
というかこれ交流に出していいのかなあ……?

リエイさん、フージェンさん、レオンさん、シオンさん、そして未登録からポーラさんお借りしました。

にしても、ミッドガルドの私邸には蒸留室があるみたいです。たいした大きさの屋敷でもないのに(笑)






先ずはじめに愛があった


「リエイ、だっけ。それ何の歌?」
「―――かんちがい」
「へ?」
甲板から海を見渡しながら歌うリエイに、船の船員であるフージェンが尋ねた。
返ってきた答えはフージェンの疑問を解くこともなく、リエイは再び虚空を弾きながら歌を歌う。
通りかかったレオンが、先のやりとりを聞いていたらしく、笑いながら会話に加わった。
「その歌、オレも昔会った行商にくっついてた吟遊詩人から聞いたことがある。そいつも何の歌かは分からないって言ってたよ」
「どういうこと?」
「そいつは、どこかの吟遊詩人が適当に作ったんじゃないかってさ」


先ずはじめに愛があった
愛は優しさを生み 世界を創り出した


「良い声ですね」
酒場の片隅で歌う少年に、ロアノートは声を掛けた。
少年はその一言が意外であったように、弦を弾く手を止めた。店主に頼まれ歌っていたが、店の様子から察してもまともに聞いている者など居ないと思っていた。だから適当に歌っていたのに、予想外に感想を貰ったから驚いてしまったのだ。
「僕はロアノートって言います。色々な伝説や伝承を集めている者で…、宜しければ、その歌の謂われとか教えていただけますか?」
「…それは無理だ」
「何故?」
ロアノートが首を傾げると、吟遊詩人の少年―――シオンは、ため息を吐いた。
「オレも、知らない。別の奴から教わった歌だが、その男も知らないと言っていた」


先ずはじめに愛があった
愛は優しさを生み 世界を創り出した
世界はやがて愛を離れたが 愛は愛のまま在り続けた


「この歌は、正しくないものが正しくなった歌なのだ」
「おーいディター、奥の廊下から怪音が聞こえるぞー」
「つくづく失礼な男だな、カルーア・バーデン」
廊下の奥から黒いマントを羽織った銀の髪の男が文句を言いながら現れる。その貌の左半分は、目を中心に赤く罅が走っていた。人形である。
普段は町の奥の山にある物置小屋に待機している戦闘用人形《テンペスト》は、今朝早くから工房に来ていた。カルーアはもちろん持ち主であるディタですら移動を知らなかったようで、朝居間に行ったら鎮座していた黒マントの人形に驚いたものだった。
何故彼が工房に来ていたのか―――――その答えは、同じ朝の、少し遅い時間に判明した。
町の通りを駆け抜けていく冒険者たち。
モノクロを基調とした服に、赤銅か赤鉄のような色をしたザグナルを持った少年。こちらは見知った顔だった。
そしてその少年を追う、懐かしい制服を着た見知らぬ一組の男女。
だいぶ遅れて、これまた見知った冒険者数名。
朝、カルーアとディタの姿を見たテンペストは「おかしなものが来る」と言っていた。遅れて現れ、慌てた様子で前の3人を追って行った冒険者たちを見送ってから、ようやくテンペストの言ったものが『彼ら』であることが解った。
「彼らは私と同じものだな」
「《魔女》ってことか?」
「君は実に愚かだなカルーア・バーデン」
テンペストの暴言はいつものこととして聞き流したが、言葉が示す意味までは聞き流せなかった。
「魔女じゃない…っていうと」
「人形か。機構は昶みたいな感じかな?」
「そうだろうね。あれは北のヒューフロストの国務機関服、彼の国はセルネオが近いから、技術が流れていることもあるだろう」
「成る程ねえ。人形っていうと、ディタはあの追いかけてるのを止められるのか?」
「無理だ。ディタの力は虚ろの身を操る術。中身がある内は従わない」
「そう云う意味で自分と一緒って言ったんだろ、テンペストは?」
そうだ、とテンペストは主人の言葉に頷く。
そんなやりとりをしてから間もなく。
テンペストは歌いだして、更に歌について何か語り始めた。
カルーアにとっては面倒なことこの上ないが、ちゃんと話を聞いてやらないと延々喋り続けるため、仕方なく相手をした。
「正しくないってどういうことだ?」
「それは……歌詞のことだ。この歌の歌詞はこれではないということさ」
首を傾げるカルーアを気にも留めず、テンペストは窓の外を見やった。そして小さく呟く。
でたらめの愛の中で、あの子は未だ逃げ続けているのか、と。


先ずはじめに愛があった
愛は優しさを生み 世界を創り出した
世界はやがて愛を離れたが 愛は愛のまま在り続けた

先ずはじめに愛があった
愛は世界であり 世界は愛であった


「―――スク、此処は屋敷ではありませんよ」
「失礼致しました。久し振りに御主人様が傍に居られるから、嬉しくて…」
書類をまとめていたミッドガルドが、手を止めて同室に居る女をたしなめた。
黒いローブを着た陰気な女は、色の悪い顔で微笑み、カップにお茶を注ぐ。そのお茶に一滴、懐から出した小瓶の液体を垂らすと、カップをミッドガルドに差し出した。
「入れたのは、何です?」
「火酒を。そろそろ効果が切れる頃だと思いまして」
「毒見をお願い出来ますね?」
「私が飲んでは、御主人様が飲めなくなります」
「そのつもりです」
「手厳しいお方だ」
くすくすと笑いながら、スクは差し出したカップを下げた。
「今の歌。どこで知ったのですか?」
「さあ、忘れてしまいました。旅の者が歌っていたと思うのですが」
「成る程ね…」
まとめた書類を机の端に置いて、ミッドガルドは大きく伸びをした。スクに水を持ってこさせ、机の引き出しから出した銀の薬瓶から錠剤を一粒取り、水と共に飲む。
一連の動作は普段のミッドガルドからは想像出来ないほど砕けていた。
その様子にスクは何の反応も示さなかったが、ミッドガルドを水が半分ほど残ったカップを置いてから苦笑した。
「…やはり貴女を呼んだのは間違いでしたね。どうにも屋敷に居るような気分になってしまう」
「主人に安らぎを与えられるならメイド冥利に尽きます」
「“スク”が与える安らぎなんて、御免被りますよ」
「私も御主人様に毒を盛るなんて嫌です。考えるだけでも恐ろしい」
つい先程の自身の行動を棚に上げ、しれっとスクは答えた。
スクは王都にあるミッドガルドの私邸に勤める蒸留室女中だった。そして私兵《蟲》の一人でもある。現在執務室に常から控えていた他の《蟲》たちがファーレンハイトの『ゲーム』に駆り出されているため、私邸に常駐している彼女が王城に呼び出されたのだ。
「それで、御主人様。さっきの歌こと…何か気になることでも?」
「たいしたことではありませんよ。…ただ、よく広まったものだと思っただけです」
ため息のようにミッドガルドは呟いた。

その歌は元々別の詩があった。
だが、歌い手や語り手に言い継がれていくうちに、詩が変わった。
その変化については大陸の東にある島々固有の言語の所為であると説明がつけられていた。
大陸より伝わった歌が、些細な誤訳をされてまた大陸に戻った。
ただそれだけの歌だった。

「ですが、本当にそれだけでしょうか? 幾ら歌い継がれるうちに詩が変化するからといって、“前の詩が駆逐されること”などありえるでしょうか? 今大陸各地にあるこの歌は、誤訳の方が多くを占めています。移ろいやすい口伝という媒体であればこそ、変化前の詩がほとんど伝わっていないということが不自然な気がするのです」
「何らかの作為があったと?」
「その見解は興味深いですが、大陸全体に作為をしたというのは考え難いですね。それでは神の所業です」
「神はお嫌いですか?」
首を傾げるスクに、ミッドガルドは鼻で笑った。
「神なる存在があったとして、それ自体の好嫌を語るつもりはありませんよ。ただ、意味の無いことをすることが嫌いなんです」
「神であっても、無意味な行動をすることは赦せませんか」
「力あるものなればこそ、その力を無意味に振るうことは許容しかねる」
「御主人様らしいですね」
そんなやりとりをしていると、戸を叩く音が執務室に響いた。聞きなれない叩き方をしたノックに、ミッドガルドが首を傾げる。
スクが執務机に置かれたティーセットをお盆にごと回収してから、ミッドガルドは「どうぞ」と入室を促した。
「失礼いたします、こんにちは宰相猊下。あの、ファーレンハイト様はいらっしゃるでしょうか?」
戸を開けて入ってきたのは、私兵や国の要人以外で宰相執務室を訪れる数少ない人間の一人、ポーラだった。手に外套と籠を提げた彼女の後から、若干申し訳なさそうな鍬形も続いて入ってくる。
「ごきげんようパウラティーシャさん。陛下なら、自室の方に居られますよ。今日はどういったご用でしょう?」
「ケーキを焼いたので召し上がっていただこうと…。番兵の方に宰相執務室に居るのではと言われてここを目指していたのですが、道に迷ってしまい、この方に案内してもらったんです。前に一度、この部屋でお見かけしたことがあったと思ったので」
「そういえば、そんなこともありましたね」
言いながら、ポーラは鍬形を示す。鍬形は余所行き用の“とてもいい笑顔”をしているミッドガルドの視線から逃れるように顔を背けた。
「陛下の部屋に行くなら、案内をつけましょうか。―――スク」
「はい、御主人様」
ティーセットを持ったままのスクが、ポーラに一礼をした。
「私、ミッドガルド邸のスチームメイド、スクと申します。お見知りおきを、パウラティーシャ様」
「あ、ご丁寧のありがとうございます。パウラティーシャ・ネイディーンです。ポーラと呼んでください、スクさん」
つられてポーラもお辞儀をした。
スクがポーラを連れて宰相執務室から出て行く。それぞれがミッドガルドに礼をして、戸が閉まった後。
「二度も同じ失態をしてしまい、真に申し訳ありません…」
「蜻蛉ですらみつかるんです。貴方が隠れ得るとは思いません。あそこまでいったらある意味才能ですね」
がっくりと肩を落とす鍬形に、ミッドガルドが嘆息した。ポーラは何故か《蟲》たちをいとも簡単にみつけてしまう。元より隠密任務でも無い限り完全に隠れはしていないが、それでも常人には気にも留まらないように行動しているはずである。擬態昆虫をすぐに発見するような、そんな勘でも備えているのかも知れない。
「行かせて良かったんですか?」
「現状彼女に害意はありません。陛下が珍しく覚えている外部の人間ですから、偶に外の空気に当たるのもいいでしょう。万一のことがあっても、陛下の元にはスクが居ますし、此処には貴方が居ます」
珍しい上司の信頼に、鍬形は静かに礼をして護衛任務に戻った。
鍬形が姿を消してから、ミッドガルドは机の端にある未処理の書類束に手を伸ばし、ふと思う。
―――――それでは神の所業である。
彼の歌の原文は、大陸ではあまり見ない神話思想を謡ったものだった。
三源六理の神々の創世神話。初めに唯一つの神が在り、それは対なる神を創り、二柱の神は世界を創ったとされる。
神話の真偽を語るのは無意味だろう。その神を信じるものにとって、神話は事実である。
ならば、歌の原文が伝わっていないのは、どこかの誰かの“神”がその神々を疎んだからだろうか。
それとも。
謡われた“神々自身”が、消えたかったのだろうか。
自らの考えを一笑に付し、ミッドガルドは執務に戻った。



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