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08 2008 / 12
二個目のジョウガ関連と云うか、薬関連の過去話。
もしくは小娘が子持ちヤモメもいじめる話。

書くたびにジョウガは駄目親父だなあと思います。



とある晩。
ジョウガ達が寝床としたのは山道に沿って設けられた山小屋だった。屋根と床と壁があるだけで野宿と大して変わらないような小屋。
外で寝て身体を壊すような面子ではないので、いっそ野宿でも良かったのかもしれない。むしろ周囲を囲む残念な建築物を見て切なくなるよりは森林に囲まれていたほうが精神的には良いと思う。
それでもこの場所に居ようと思ったのは屋根を必要としたかったのだろう。建物の中にいることで、まだ自分には建物が必要なんだと言い聞かせたかった。そうすれば、まだこちら側に居られる。
これで向かいに座ってニヤニヤ笑っている女が居なければもっと良かったのに、とジョウガは思った。
「いつになくしおらしいじゃないか。やはり息子が居ないと寂しいか?」
メリッサは悪魔的な微笑みを浮かべながら問いかける。
「気のせいだ」
言葉少なにジョウガが返した。
もう一人の連れ合いであるアップルフィールドは小屋の周囲の見回りに出ていた。いつもなら見回りはジョウガがやっているのだが、たまには僕がと押し切られてしまいアップルフィールドが見回りをすることになった。もちろんジョウガがいつも見回りをしているのは年頃の娘と幼い子供を独り歩かせては心配だからなどという理由ではない。
メリッサと二人きりになると、彼女は高確率でジョウガが避けたい話題を持ち出してくるからだ。
「気のせいね…まあいいさ。気のせいでも、貴様が息子に対して恐れを持っていることに変わりは無い」
「…お前に人の感情が解るものか」
「ああ解らんね。『人でなし』には解らんよ。貴様とて人に成り損ねたものの気持ちなど解らないだろう?」
「解りたくもない」
会話を断ち切る意をこめて吐き捨てるも、意を解しているであろうメリッサは構わず続けた。
「いつになったら打ち明けるつもりだい、『お父さん』?」
「いずれ打ち明ける。そのつもりだ………、が…」
告げる声が緩やかに途切れた。真っ直ぐにこちらを見つめるメリッサの視線から逃れるようにジョウガは窓の外を見上げる。雲ひとつない静かな夜空だった。
「父親か。俺にはあの子に…アップルフィールドに父と呼ばれる資格があるのか?」
「ないんじゃないか? そもそもあれは自分が人の子だという認識が無いぞ」
道を歩いていたら昔の女そっくりな人物に出会い一人で気まずくなっていたら突然その女に右ストレートを喰らったようなような顔でジョウガはメリッサに向き直った。
返答が欲しくなかったわけではないが、あまりにはっきりと答えが返ってくることは考えていなかった。メリッサの性質上、きっぱり言われてしまうのは仕方が無いことだがその前に。
「少しは空気を読んでみようとか思わないのかお前は」
「読んだら読んだで気味悪がるくせに、贅沢な難癖をつけて欲しくないな」
メリッサは鼻で笑った。
「資格なぞ知るか。どうせアップルフィールドは昔の事なんて覚えていやしないんだ。だったら資格云々よりも、貴様がどう思っているのかが重要なんじゃないのか? 貴様はあれの父親で居たいのか居たくないのか。どっちなんだ?」
繰り出される剛速球に呆れながらも、その言葉には何処か人らしさが含まれているようで少々ジョウガは感心した。メリッサのことだから事実関係を確証するためだけに問うているのだろうが、どうしてかその問いかけは数多の人心を通して出るものに似通っているのだ。
「意外だな。お前がそんなことを言うなんて」
「記憶がある」
「……?」
「人の女の腹に居たときの記憶だ。話しかけられて腹の壁越しに撫でられていた。それと私を生み出したあの男…」
ああ、とジョウガは遠くを見るメリッサの顔に懐かしい面影を見出した。
かつての親友にして、今はジョウガとその息子に呪わしい運命を架した張本人。それでも心の底から恨む事ができないのは最早この世の者ではないからか、それとも最後に見せた彼の迷いと安堵からか。
あの場には3人の者が居たが、親友の最期を見たのは自分だけだとジョウガは思っていた。アップルフィールドはうつぶせになって気を失っていたし、メリッサはまだ豆粒程しかない存在だったから。だが腹の中のことを覚えていたということは…。
「幾億もの怨嗟と憎悪のウラミ言、でも最後にあの男は「ありがとう」と言った。創り出してしまってごめん、生まれてきてくれてありがとう、と。私は彼らを人が使う意味での親だと思ったことなどないが、彼らはあの時確かに私の『親』だったんだろうよ」
メリッサもあの男の事を覚えていたようだった。伝えるつもりなく発した想いは、しっかりと娘に届いていたということだ。
生まれてきてくれてありがとう。
掛け値なしで言えるのならば、それは親に違いない。
(言えるだろうか。今のあの子に、……今の俺に)
我知らず握った拳に目を落とし、再び上げるとあいかわらずメリッサはニヤニヤと笑っていた。先ほどまで思い出を語っていた雰囲気は一片も感じられない。
この女は…。出かけた言葉をぐっと飲み込んで、ジョウガは答えを探しながら我が子の帰りを待った。


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