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11 2009 / 12
プレゼント月間ファーレンハイト編。
プレゼントの話なのに殺伐としてます。
ちなみに最終的な終結とか考えておりません。
ミルドさん、あおいちゃん、アルフレドさん、紅蓮さん、あと百足さんお借りしました。

■読む上でのちょっとしたメモ

クウォン→ヒューフロストの貴族シュバルツシュタイン家当主。王に仕えることを至上とする国的には最高だが人物的には若干難のある人。

《蟲》→ヒューフロスト王国宰相ミッドガルドが有する私兵の名。メンバーそれぞれに虫の名前が付いている。鍬形・蜻蛉・蟷螂・蚕蛾はメンバーの名前。


挨拶、様式、社交辞令。
俺たちの関係を表わすならば、それらが最も近しい表現だ。
もっと簡単に言えば状況に慣れていたのだろう。俺が物心ついた頃から既にそれは身近なことだったし、恐らく当人たちはもっと昔からその『追いかけっこ』を続けている。
そして、それ程までに長く続いてしまっているのは互いに手加減をしてるせいだと俺は思う。
こう言ってはミッドガルドは否定するのだろうが…言い換えれば、ミッドガルドは本気を出しきれていないのだと思う。枷の一端は言うべくも無く俺の存在だろうが、その辺はまあ、本人も承知の上のリスクだろう。
そして、追う側には到底理解できないであろう利を持って―――あるいはそんなものは無いのかも知れないが―――そうしているのであろう彼は、相変わらず真意などこれっぽちも見せないで、ただ手加減をしているという事実だけを追跡者に伝えてきた。

珍しく自室に居たファーレンハイトは、更に珍しく部屋に客を招いていた。応接用のテーブルには茶菓子と二組分のティーカップが置かれ、客人はファーレンハイトと向かい合うように座っている。
しばしファーレンハイトの話を聞いていた客人は、赤いお茶を一口飲んで息を吐くと、お茶よりも紅い目で正面を見据え、口を開いた。
「お断りします」
提案を、テオフィルは一言で斬った。
「断わるだろうとは思っていた」
ファーレンハイトは息をするように自然に、返した。
テオフィルは何時になく厳しい眼差しでファーレンハイトを見ていた。今しがたファーレンハイトが提案したことの所為だ。
たまには本気を出してみないか、と。
長年、ミッドガルドは『紅い薬』を追い求め、それを知る者としてテオフィルは追跡を逃れてきた。それがいまだ決着に至らないのは互いに本気を出していないからだとファーレンハイトは考えていた。テオフィルが本気を出し切らない故は解らない。だが、ミッドガルドの重荷となっているのは明らかにファーレンハイトである。ファーレンハイトに仕え、宰相としての責務に押され薬の捜索にまで十分に気を回せないでいる。
ならばファーレンハイト本人が『紅い薬』を探すようになれば、少しは現在の均衡を変えられるかも知れない。
ファーレンハイトの提案は、そういうことだった。
「もちろん騎士団を動かしたり国にかかわることはしない。この冬の入りの時期にそこまでするほどうちの国は余裕もないからな。やるのは俺個人の力の及ぶ範囲でだ。故にヒューフロストの外にも適応される」
「……それは、僕がどう言ってもやるつもりですね」
「そうなるな。“俺が勝手にやる”。テオフィルもミッドガルドも意見しても無駄だ」
「美しい主従愛に涙が出そうですよ」
「なんとでも言ってくれ。期限は3週間。君はどう対応してもいい。今まで通りでもいいし、本気で……俺やミッドガルドを殺しに来てもいい。そのリスクだけは覚悟しておく」
「僕がやらないことを知ってて言ってるでしょう?」
「“美しい主従愛”だろう? ミッドガルドのためなら俺は何でもする。命を賭けてもかまわない。もとよりその程度の命さ」
「一国の王の科白とは思えませんね」
テオフィルは呆れたように呟いた。表情の険しさは、幾分か和らいでいる。
「ゲームみたいなものだと思ってくれ。3週間だけ付き合ってくれればいい」
「僕だけ一方的に割に合わないゲームですね」
「ならば何か賭けようか? 俺の命は受け取ってもらえないようだから、別のものででも。君の望みに適う報酬なんて思い浮かばないが」
「報酬……ね。わかりました。そのゲームお受け致しましょう。ただし報酬は、“今直ぐに”、“確実に”支払ってもらいます。―――――居るのでしょう、宰相様の《蟲》さん?」
承諾と共にテオフィルは席を立った。
同時に、呼びかけられた《蟲》が廊下の扉から入ってきた。宰相私兵であることを示す黒い兵装に、顔や腕から青い角のようなものが生え皮膚の一部が変質した彼は《鍬形》と呼ばれる私兵だ。
「今の、聞いてましたよね。陛下は本気で『紅い薬』を御所望ですよ」
「そのようだな」
テオフィルの言わんとすることを察して、鍬形は苦々しく肯定した。
「それでは陛下、お邪魔しました。3週間のゲームが終わったら、またお会いしましょう」
鍬形の様子を認めてから、にっこりと微笑みテオフィルは会釈をした。挨拶はしっかりと「3週間は此処には来ない」と言いながら。
部屋を出ようと扉に向かったテオフィルは、同じ扉から入ってきた鍬形とすれ違う寸前、鍬形にしか聞こえないよう小さく呟いた。
「今日此処に居たのがあなたで良かった。他の《蟲》だったら、こうもすんなりとは行かないでしょうから」
それはもしかしたら、鍬形を嘲った言葉だったのかも知れなかった。事情を知っていればそう捉えるほうが自然だろうが。
鍬形は素直に感謝されていると受け取った。確かに他の《蟲》ならば―――――蟷螂や百足はともかくとして、蚕蛾や蜻蛉だったら、そのまますれ違わせることは無かっただろう。たとえ陛下の御前であっても。
テオフィルが出て行ってから。
ファーレンハイトは鍬形に尋ねた。自分が支払うべきものは何か、と。
「…―――――」
鍬形は、彼が思い当たる限りの『支払い』を語った。
ファーレンハイトは語られた言に目を見開く。
「……そういうことか」
ようやく搾り出した納得の言葉は重かった。
テオフィルが欲しいのは死ぬ覚悟ではない。
殺意を持つ者の責任を意識せよと、言っているのだ。
「それでも、俺の意思は変わらん。早速命令を出そうか。今から、宰相執務室へ向かう―――」


数日後。

インテグラにある冒険者ギルドからテオフィルは出てきた。以前受けたクエストの報告をし忘れていたからである。依頼内容は完了しているし、特別金銭に困っている訳でもないが、終了報告は早めにするに越したことはない。
本当ならば、インテグラに―――――というよりも、ヒューフロストに足を踏み入れたくなどなかったのだが。
ギルドの前の通りには、ギルドに用事がある者や待ち合わせをしている者が多数居た。
その中に、テオフィルに向かって手を振る人影があった。
「テオ兄ー!」
「あっ、みなさん……」
ぞろぞろと近づいてきた集団に、テオフィルは解りやすく顔を引きつらせた。
その様子にあおいは首を傾げる。
「どうしたのテオ兄。顔真っ青だよ?」
「どっか具合でも悪いのか?」
紅蓮が尋ねると、肩に乗った鷹も首を傾げた。
「体調は問題ありません。具合と云うよりも、都合が悪いというか……」
「はっきりしないなあ」
ミルドが顔をしかめて呟く。
テオフィルは、周囲を見回してから一つため息を吐いた。インテグラに入ってからそれなりの時間が経っている。長居するつもりは無いが、今は安全かもしれない。
そう考えて、集団の後ろのほうに居たアルフレドに尋ねた。
「アルフレドさん、最近変わったこととかありませんか? 見慣れぬ騎士隊が居たとか、王都の方で何かあったとか」
「いいえ、そのようなことは聞いてません。…もしかして、《紅い薬》のことで何か?」
「ええ、まあ…」
聞き返されて、言葉を濁す。テオフィルとヒューフロストに関する事といえばそれしか無いのだから、アルフレドが思い至るのは当然だろう。知っているのは構わない。参加することも。だが、巻き込むことは良くない。
どうにか会話を切り上げてこの場を離れたかったテオフィルだったが、それは叶わなかった。
テオフィルと紅蓮の肩に乗った鷹―――霞丸が視線を向けたのはほぼ同時だった。
「みなさん、逃げて―――!」
叫びと同時にテオフィルは戦闘鉤《紅鴉》を構えた。頭上から降ってきた斬撃を、間一髪で受け止める。
「なんだこりゃあ!?」
「あれは氷刃騎士団の制服…。でも何故?」
警告を受けてその場を離れたミルドたちは、突然の出来事に状況を理解できなかった。反射的に武器を構えた者も居た。だが、アルフレドの呟きのように、襲撃者の姿を見て構えた武器を振るうことを躊躇った。襲撃者はヒューフロストを守護する騎士の格好をしているのだ。
拮抗している剣と紅鴉をテオフィルは強引に振り払った。間髪入れずに後ろに跳ぶと、直前まで居た地点に光る魔術の矢が殺到する。
テオフィルは矢が飛んできた方向を見上げた。冒険者ギルドのある建物の屋上。そこには魔術の矢を放ったであろうベールを被った女祭務官と、身なりの良い少年、そして袈裟もフードも着けていない黒い聖服の男が居た。
「誰です、あなたは?」
「お初お目にかかる―――」
テオフィルの問いに、男は役者のように仰々しい仕草で腕を振りながら、語り掛けてきた。地上からは遠い場所に居るにも関わらずはっきりと聞こえる、よく通った声だった。
「私はクウォン。我が王の頼みにて君を捕まえに来た者だ。君が《紅い薬》に関わるもの、テオフィル・エリクサム君で合ってるね?」
「違ってたらどうするつもりだったんだ…」
小さい声でミルドはつっこんだ。ここまで派手なことをしては、人違いでは済まされない。合っているから良かったものを。
「間違うことは無い。王とミッドガルドから話は聞いている。“この反応なら、違えない”」
クツクツとクウォンは口元に手を当てて笑う。
「まあ、私は単なるアンテナだよ。こうして直に会えば補足精度も上がるからね。本命は、そら」
クウォンは令嬢の手を誘うように、手を伸べた。
その手が示す意味を悟り、テオフィルはとっさに紅鴉を踏み台にして跳び上がった。
直後、地面から黒いスーツを纏った小柄な人影が飛び出す。奇襲を仕掛けようとしたようだったが、どうにか避けることが出来たようだ。が、
「《蟲》が、一匹なわけないでしょう?」
間近で響いた声を、しかしテオフィルは遠くで聞いていた。真横から迫る殺気を、どうにか首を捻って見ること“だけは”出来た。名前の通り、百足のように鉄板が連なった盾の先に、牙のように刃が付いている。その刃が確実にテオフィルの首を捉えていた。
空中ではまともに避けられない。首筋に迫る冷たい金属の気配に、テオフィルは最悪の状況を覚悟した。
「霞丸!!」
紅蓮の号令に、肩の鷹は一直線に飛び立って、テオフィルに向かう殺気に体当たりをした。百足の牙はテオフィルの首を浅くなぞって横に落ちていった。
ほとんど同時にテオフィルも真下に着地し、素早く紅鴉を構え直す。
墜落した百足の元に、先ほど地面から出てきたスーツ姿の人物と、それとは対照的に背の高い青年が駆け寄っていた。二言三言何かを話し合い、唐突にスーツ姿の人物がギルドの建物の屋上に向かって怒鳴った。
「なんで奇襲バラしちゃうんですかっ!? クウォンさまのアホーーー!!」
「…言い過ぎだ蜻蛉」
長身の男が、蜻蛉と呼んだスーツ姿の人物をたしなめた。
「どの道、無理がある。こんな市街のど真ん中で奇襲をかけるのは」
「だからこその奇襲でしょ!?」
「発想は悪くないと思うんですがねえ、そこからの発展が宜しくないのかと」
なにやら言い合っている3人に警戒しながら、テオフィルは袖で首の傷を拭った。血は、一筋流れる程度しか出ていない。
テオフィルの元には、再びミルドたちが集まってきた。口々に疑問を投げ掛けてくる。
「テオ兄大丈夫!?」
「本日二度目ですが大丈夫ですよ。かすり傷です」
「クウォンと言えば、名門シュバルツシュタイン家の当主の名前だったはずですが貴族に狙われるようなことをしたんですか?」
「流石にそんな心当たりはありませんけど…」
「あっちの黒いのは前に見たことあるな」
「はい、以前にも襲撃してきたヒューフロスト宰相私兵《蟲》のみなさんです」
「ぎりぎり間に合ってよかった。いつになく殺気立ってたな」
「先ほどは有り難うございます、紅蓮さん。これにはかくかくしかじかな事情がありまして…」
答えている内に、また光の矢が降ってきた。
「のわぁぁぁああああっ!?」
誰のだか判らない悲鳴と共に、散り散りになる5人。今度は誰もしっかりと戦闘態勢に入っていた。しかし。
「武器を収めて。みなさんはこの場を離れてください」
一人前に出て、テオフィルは言った。
「えっ、でも……」
「優しいね、君」
異を唱えようとしたあおいの声を、よく通った声が遮る。クウォンがいつの間にか地上に降りていた。両脇に騎士団服の男とベールの祭務官を従え、その横には《蟲》たちも居た。
「陛下は“本気になった”のですね」
やれやれ、とテオフィルはため息を吐いた。呆れと、仄かな笑みを含んだ息だった。
「その辺りの事情に私は詳しくないが、君たちが言うのだからそうなのだろうね」
「どういうことだ、テオフィル?」
クウォンの曖昧な言い分に、ミルドがテオフィルに問うた。テオフィルは答えない。
クウォンは楽しそうに笑った。
「挑む胆力はいいが、決断はしきらないようだ。伝えたくないのも優しさだが、正直に言うのもまた優しさだよ」
言いつけられた言に、テオフィルは笑みを消し、目を伏せた。仲間たちは皆背後に居る。この位置からなら見られることは無い。再び見開かれた目には、鮮やかな紅の輝きがあった。
紅い光をクウォンたちが認めた瞬間、テオフィルの姿が消えた。
「僕はこっちですよ」
皆が驚き、辺りを見回すよりも先に、声が落ちてきた。
見上げると、冒険者ギルドのアーケードの上にテオフィルが居た。
「追いかけるのなら僕一人にしてください。彼らは、関係ない」
有無を言わせぬ口調で断言し、テオフィルは通りのアーケードを伝って走り去った。《蟲》が後に続く。
「私の兵は…別にいいか。あまり多くても手間だろう」
4人が消えた通りを見やってクウォンは大きく独り言を言った。
「お、おい、アンタ。これはどういうことなんだ!?」
紅蓮がすぐさま問い詰める。ミルドは止めようとしたが、間に合わなかった。
「彼が話さないのなら、私から話すのはマナー違反じゃないかね?」
「我々は先ほど、アナタの手の者から攻撃を受けています。テオフィル君がボクらを無関係と判断しているのなら、その無関係の者に攻撃を加えた代わり…と言えば、話していただけますか?」
幾分冷静にアルフレドも尋ねた。クウォンはふむ、と少し考えてから「わかった」と納得した。
「彼がこの国の王に追われているのは知っているね。件の《紅い薬》のためだ。最高指揮は宰相ミッドガルド。彼が命令を出し、薬を知る者を追っている。その捜査レベルは普段ならば中度、これは『必ず生け捕りにせよ』ということだ。だが今回、王の勅命の下期間限定でその捜査レベルが格上げされた。『生死は問わず』とね」
「なっ…!?」
あまりのことに、一同が絶句する。薬を探すためにテオフィルを捕らえようとしているのに、殺そうとするなんて。
つまりは、殺すつもりでかかってくる敵と戦わせないようにテオフィルはこの場を離れたということだ。話せば心配をかけてしまうから、何も話さずに。
「まあ、情報を聞き出すだけならば死んでいようが関係ないといえば関係ないからね。高度な死霊操術は希少だが、全く無い訳ではないのだし」
「そういう問題かよ!? そんな命令されて、アンタ何も思わないのか!?」
「私は臣下だ。王の望みには最大限応えるのが責務であり何よりの悦びだ」
「……っ!!」
冷たく返すクウォンに、紅蓮は拳を振り上げたが、すんでのところで腕を下ろした。この男を殴ったところでどうにかなるものでもないし、能面のようなクウォンの顔を見ると殴る気が失せた。
「探すのはやめたほうがいい。彼とて君たちの助けなど望んで居まい」
「わかってるよ、そんなこと」
去り際に投げかけられた言葉に、ミルドは苦い思いで言い返した。どの道あのスピードで逃げていれば、探したところでみつけられない。それでも、彼らはテオフィルと《蟲》が消え去った道を辿っていった。
去り行く冒険者の背中を見送り、クウォンはふむと顎に手を当てた。何かを考えているように。
「若しくは、死が無意味ということかも知れないね。かの薬は死者を蘇らせると言うから」
殺して持って来いということは、生きていては持って来られないということ。
死んでも価値があるということは、存在自体にその価値があるか、死を無意味にする何かがあるということ。
どちらにせよ、あの様子ではテオフィルはこの国には戻ってこないだろう。それではクウォンのヒューフロスト国内に張ったレーダーも無意味になる。王から頼まれたからには、彼も何かしら薬の探索に協力せねばなるまい。
「城に戻って、君たちの調整をしようか。外にも追って行けるように」
クウォンは両脇に控える従者たちに言いかけた。歩き出す主人に、従者は無言で付き従った。


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