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24 2010 / 09
元々考えていたことだけど、生かせないので書かなかった宿家族の事情。
もしも3年後のORPGがあるとしたら、生かせないでもない。

まやちゃんお借りしました。





我が魂に祝福を。
生まれ出でてから終焉の淵に至るまで。
その眼が見るは獣の一生。
地を這うものであろうとも、空迷うものであろうとも、獣は獣の生しか見れぬ。

彼が魂に祝福を。
獣に生まれ、獣の生を見るもの。
だが獣にも夢を見ることは出来る。
神が臨めぬ獣の生を贄として、獣は神の夢を見る。

彼らが魂に祝福を。
其は神の夢を観る獣。其は獣の生を観る神。
与えられし宿命が果たされるその日に至るまで。

我らに、わずかばかりの祝福を。



「待ってて。必ず、戻るから」
目の前の家、まだ隙間しか開いていない扉の向こうから声が聞こえる。
辺りの景色は、見慣れたもののようで微妙に違っていた。
家の横にある柵は、3年前に壊れてクオ君に直してもらったはずだ。以前はろくに塗装もしていなかったけど、あまり良くない出来を隠すためと「これがヒャッカのイメージだから!」と押し切られて白く塗られたのだ。玄関直ぐにある木も、もう自分の背丈くらいはある。いや、ちょっと前までは背丈よりも高かったのだが、ニグラスとダチョウにつつかれて上のほうが折れてしまったのだが。
いや、そもそも。
「何で“見えてる”んだろう…?」
思わず声に出た。本来ならば自分の目は見えないはずなのだが。傍らにある木の表面に手を添える。掌を伝う木肌の感触は、普段と変わらない。その手をそのまま上に上げ、梢についた木の葉に触れる。触れた木の葉が揺れ動き、指先に付いたり離れたりする様を『視覚』として感じ取るのは妙な感覚だった。
とまれ、見えるということ自体に違和感は無かった。
問題は、今見えているこの光景。
先程の声には聞き覚えがあった。かつて両親が家を出て行ったときの、父の最後の言葉だ。ならばやはり、ここは12年前の我が家ということになる。脈絡もなく始まる過去の再現―――――夢ならばままあることだ。
(じゃあなぜ僕はここに居るんだ?)
スローモーションで開く家の戸を眺めながら、ロアノートは自問する。あの時、自分はヒャッカに寄り添っていた。母に突き飛ばされて呆然としていた弟の元に手探りで駆け寄って行った。だから仮にこの夢が過去の記憶で、見えるはずの無い視覚情報まで再現されているのだとしても“家の外に居る”ことはありえないはずなのだ。
開け放たれた扉から、男が出てきた。緑色の髪を適当に束ねた玉虫色の目の男。記憶の通りならば、彼がロアノートとヒャッカの父のはずだ。
父は焦りをにじませた顔で家の戸を閉め、駆け出した。辺りにはもう母らしき人影は無い。だが浮島の外にでも出ない限りは、行く場所は限られてくるだろう。心当たりのある場所へ向かうため、父は家からまっすぐ伸びた道を走る。
(これが昔に起こったことなのか)
忘れられない過去の再現。誰の視点かは知らないが、夢に見るほど自身の中で比重が思いのだろう。当然といえば当然だが。
ロアノートが立っている位置の直ぐ横の道を、父は通り過ぎようとしていた。こちらに気付いている様子は無い。すれ違いざま、ロアノートはその顔を目に焼き付ける。目覚めていては見ることのできないものを夢の中で見るというのはなんとも奇妙な話ではある。
恐らく彼はこのまま走り去るのだろう。追っていけば、どこで母をみつけたかくらいは分かるだろうか。そんな興味から父を目で追っていた。過去の再現ならば、彼はこのまま行くのだろう。

その父と、視線が合った。

えっ、とロアノートは声を漏らす。すれ違うまでは気付いていなかったはずの父は、確かにその目でロアノートを見据えていた。
「………ロアノート?」
「カノン、どうして…僕が見えてる?」
見えているのか? その問いかけを、自分が誰かにしているということが不思議だった。本来ならば見えないのはロアノートのほうだ。そして過去の再現であるカノンには、傍観者であるロアノートが見えるはずが無い。なのに…
次に言うべき言を探していると、突然カノンが笑い出した。ふっと吹き出し、けたたましく堪えることも忘れたように。
「何がおかしい?」とロアノートが戸惑っていると、カノンは口元を押さえ、話し出した。まだ笑いが収まらない様子で。
「そっか、夢か。あいつが見せているんだね。道理でおかしいと思ったよ。こんな昔のことを思い出すなんてさ」
「あいつ?」
「いいんだ。こっちの話さ。……いや、ある意味お前達の話だね。妙だって気付いてるでしょ? その視点、あるはずがないんだから」
あいつが見せている? 訳が分からない。これが夢であるという結論はカノンも出しているようだ。…ということはつまり、このカノンは過去の再現ではなく、本物であるということ?
「不思議かいロアノート? 僕のこの姿は仕方ないんだよ。お前が今の僕の姿を知らないんだから。ついでに、これが過去の再現であるということは、ある意味では正しいのだから」
「こんなこと、あるはずが…」
「そうだね。ありえない。だから夢なんだよ。ついでに―――――こんな夢を見るってことは、“見つけたね”?」
シャボン液のような光沢の目に射竦められて、ロアノートは後ずさった。無意識のうちに右手を握り締める。夢じゃなければ、現実ならば、夢を見る直前まで右手には一冊の本があった。
「読んだんでしょ? だったら、大体のことは理解できたんじゃない? …いや、ロアノートなら、全部理解出来たかもね?」
小馬鹿にしたように笑うカノンに、ロアノートは先程とは別の意味で掌を握り締めた。もう戸惑っている場合ではない。
「そうだね……きっと、僕が呼んだんだ」
「そうなるだろうねえ。僕としては、二度と会おうとも思ってなかったし」
「それはこっちの科白だ。夢でも会いたいもんか。…こんなことがなきゃ」
静かに息を吸い込み、右手を突き出す。先までは何も無かった手に、今度はちゃんと一冊の本が握られている。皮のカバーがされた、手帳だった。
「これ、どういう意味?」
「読んだそのままに意味だよ。僕の日記、決意。そしてあいつとの契約書」
「………三界を視る神の目、代償の、……我が血を分けし生の光は……」
「なんで古典魔術って回りくどい表現なんだろうね? 素直に実子の視力って書いても魔術ってだけでドン引きされるんだから一緒なのに」
「あんたには…親の情ってものが無いのかっ!?」
カノンは鼻で笑う。
「あるわけがない。別に僕は子供が欲しかったわけじゃないし。マリーがねだったからね。一応止めはしたんだよ? やめとけってさ」
「………っ!」
怒りを堪えて震えるロアノートにカノンが歩み寄る。優しく、撫でるように頭に手を置いた。
「どうせ目が見えないことは解ってたからね。ただでさえ弱いマリーに、そんな子供を育てられるはずが無い」
反射的に、ロアノートはカノンを殴った。自分のことを言われたからか、母のことを言われたからか―――――或いは、どこまでも軽い父の物言いにだろうか。殴った今となってはもはやどうでもいいことだったが。殴られた勢いでしりもちをついて倒れたカノンを見下ろして、吼える。
「解ってたならどうにかすればよかっただろう!? 間引くなりなんなり…!! 洞にでも投げれば樹だって怒らない! 僕が居なくて、せめてヒャッカ君だけだったら、大丈夫だったかもしれないのに…!!」
「………」
頬を押さえ、カノンが立ち上がる。殴られて身体と共に吹っ飛んだ表情が、再び戻る。嫌悪ではなく、見る者を嫌悪させるような歪んだ笑みで。
「無理だよ」
「なっ……!」
「たとえお前を間引いても同じことだよロアノート。気付いているだろう? 契約は僕の実子一人分の視力、つまり、お前が死んだら支払いはヒャッカに相続される」
不意に歩き出したカノンにロアノートは身構える。ゆっくりと辺りを歩き回り、逃げるつもりではないようだ。
「そもそもお前の視力は無くなったわけではない。お前が見るはずだったものを、別のものが代わって観ているだけのこと。必要なのは人一人分の一生の視覚情報、だからそれは誰であっても構わない。目が見えないことを知っているお前なら、その不自由をヒャッカに味わわせたくは無いでしょ?」
あ、とカノンは手を叩く。
「でも見えなければ、嘘を見ることもないかもね」
「カノンっ!!」
「樹は全部お見通しだったんだろうね。二人とも、契約とかみ合うような力を与えられたんだから」
「お見通しだったら、あんたみたいなの直ぐに洞に落ちてたさ」
「生かされてるもんねえ。あいつの力が強かったのか樹の力が及ばなかったのか。もしかして、僕もなにか樹の役に立ってたのかな? 光栄だなあ」
白々しい、とロアノートは吐き捨てた。
「帰れよ。もうあんたの顔なんて見たくない」
「許しが出たなら帰るよ。ここはお前の夢の中だからね、お前の許しが出るまでは僕も迂闊に帰れないんだ。ヘタに動いたら、訳解らないとこに取り残されたりするしね」
再びカノンはロアノートに近づき、今度は頬に触れた。カノンと同じ玉虫色の目を示すように。もう殴る気力も起きなかった。
「僕は契約により神の目を得た。でも、神が宿っているのは代償であるお前の目の方だ。だから加護は、お前の方が強い」
手を離し、カノンは家から遠ざかるように歩き出した。そちらが彼の帰る方向なのだろう。振り返ることなく、手だけを振る。
「じゃあね、ロアノート。もう会わないと思うけど。ヒャッカに宜しくね」
「絶対言うもんか」
「言うと思ったよ。そのほうがいいだろうね」
言ってから、ふと思い立ったように振り返る。
「ああ。もしも契約を破棄したいなら、僕を殺すことだ。僕は僕の好きなように君達を犠牲にしてるし、君達も僕を好きなように犠牲にしてくれて構わない。そのくらいの覚悟はあるから」
「お前と同列に語るなよ」
「それも言うと思った。だから言ったんだけどね」
くすくすと笑いながら、カノンは小道の向こうへ消えていった。


めろめろと、額を舐められるべたべたした感覚にロアノートは目を覚ました。顔全体にもさもさしたものがいっぱいに広がって覆いかぶさっているくすぐったさがあった。
「ニグラス、そんなムキになって起こさなくても大丈夫だよ」
「いやロアノート。今日はちょっと不安なのだ。このままではお前の胸部と腹部がつぶれてしまうのではないかとな」
「………へ?」
起き上がろうとして、出来ないことに気付いた。上体が、縫い付けられたように首以外動かない。
ようやく自分の上に何かが乗っかっているということに気付いたロアノートは、手を伸ばし上に乗っているものを触る。ニグラスよりもやわらかくて毛並みのふわふわした生き物が居た。
「なんにゃ。ひとがせっかく気持ちよく昼寝をしてたというのに」
「うーん、こっちの科白かな? 起きられないから、ちょっと退いてくれる?」
「嫌だと言ったら?」
「ニグラス、ちょっと角で退かせてくんない?」
「ちっ、仕方ないにゃ」
しぶしぶと言った様子で、上に乗っていたものはロアノートから降りていった。
ようやく上体を起こせたロアノートはひとつ大きく伸びをする。そして、乗っかっていたものに挨拶をしようと辺りを見回す動作をしていると、手元に先程の毛並みの感触が擦り寄ってきた。
「えーと、にゃ、だから猫さん? ここにこんな猫さん居たっけ?」
「居たという記憶はないが、何度か見ている気がしないでもないな」
「あんまり気にするにゃ。はげるぞ。俺のことはどうでもいいにゃ。それよりも、お兄さんがちょいとうなされていたような気がしたがにゃ」
「それは貴君のようなものが乗っかってたらうなされないほうが稀であろう」
冷静なニグラスの指摘を流し、猫はロアノートに語りかけていた。見えはしないが、多分、猫は自分を見ている。
「………もしかして、猫さんがやったの?」
「なんの話かわからんにゃ」
「猫さんが“あいつ”では無いよね」
「なんの話かさっぱりにゃ。俺は通りすがりのキュートな猫さんにゃ。ほら、もふもふ」
構って欲しそうに擦り寄る猫を相手にしていると、自然と頬が緩んだ。
「何かあったのか、ロアノート?」
「…なんでもないよ。ほんと、どうでもいいことだから」
玉虫色の目が瞬き猫の姿を映したが、それを目の持ち主が見ることはなかった。



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