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03 2009 / 01
ヒューフロストを語る上で切っても切れない(と勝手に自分で思っている) 氷妖種族について、語るだけではなんだかなあと思い書いてみました。
種族について事細かに語るのもアレな感じではありますが、生態とか宗教観とか考えるのが大好きな藤縞の妄言として受け取ってください。
うん…登録したヒュー国と登録したいセンカの地にはどっちも固有種族が居るんですよね…。趣味全開。

ただ、この話の登場人物が未登録の派生というモブもいいところでして。
ヒューフロスト王国宰相ミッドガルドの私兵の話です。





「くそっ!」
既に数度したように、再び扉を叩いて七節は悪態をついた。
なんの変哲もない倉庫の扉は、今は驚くべき強度をもって七節の行く手を塞いでいる。
『どいてろ。七節』
声ならぬ意思の声を聞き七節が扉の前から引くと、後ろに居た蚕蛾が扉に向かって短剣を振り下ろした。
『…やはり無理か』
なんの音もたてずに切っ先は扉とぶつかった。否、扉と接触する直前で見えない壁に阻まれたようだった。
『扉に閉鎖の術がかけられている。内側からはどうあっても出られない』
「久々に見事な失態ですね…」
私がついていながら、と呟く七節の顔は深く被られたフードで見えなかったが、声には悔しげな響きがあった。
ミッドガルドの命を受け、城内に潜り込んでいた他国のスパイを見つけ出す任務を請け負っていたのは蚕蛾だけだった。それに「保険として」同行したのは七節のほうであり、その保険が足を引っ張る結果となってしまっただから当然と言えば当然か。
『私一人でもこうなっていた』
「なれば余計に二人で同じコトしてちゃいけないでしょう」
見つけ出したスパイを人気の無い場所まで追いつめていたところ、偶然開いていたらしい倉庫に逃げ込まれ、追って飛び込んだら逆に閉じ込められてしまったのだ。
「ミッドガルドに知られたら何て言われるか…」
やけに素直に後悔していたのはそれが気がかりだったからのようだ。
暫く扉を叩き続けたが術が解ける気配はなかった。この手の術の定型である掛けっ放しタイプの術か、術者がまだ近くにいるのか。足止めの隙に逃げ去るのが目的なのだから後者は在り得ないか。
七節が扉と格闘しているうちに、蚕蛾は倉庫内を見回した。
スパイを追い込むのに城内でも特に人気の無い場所を選んだが、倉庫の中も人気と同様なにも無かった。空の木箱が数個あるだけで、これならば鍵が掛かっていなかったのも多少は納得できる。やや高い天井には鉄格子のかかった通気口が見えたが、格子を外しても小柄な蚕蛾でも通れそうに無い。
「どうすれば出られます?」
『…この手の術は精度を上げるために制約を設けていることが多い。内のものを閉じ込める術は内側から破ることは出来ないが、外側からなら容易に突破できる。つまり、外から誰かに扉を開けてもらえばいい。鍵が掛けられているわけではないのだしな』
「なるほど…。では貴女のシルフェを飛ばして外の《蟲》を呼べば…」
『鍬形と百足は戸外任務、蜻蛉と蟷螂は第一・第二両王甥の護衛。どちらも日没までには戻ってくるだろうが…そもそも私が一人で任務に当たっていたのは他の者が居ないからだぞ』
「…でしたね。 ………ミッドガルドは…」
『今頃は六人委員の一人として評議会に出ているだろう。用事が無かったとして、我々が呼んで来るとでも?』
「………ありえませんねえ」
ため息とともに七節は呟いた。
結局のところ、扉にかけられた術が閉じ込めるための術である限り内側に居る七節と蚕蛾にはどうしようもなかった。日没までそう長くはないのだから、下手にじたばたするよりもおとなしく待っていたほうが良い。
そう結論を出すと、蚕蛾は戻ってきた《蟲》達にいち早く状況を説明できるようにシルフェを飛ばし、倉庫内にあった空箱に腰掛けて脱出の機を待った。抵抗を続けていた七節も、諦めたのか力尽きたのかがっくりと肩を落とし、壁にもたれかかっておとなしくなった。
「…寒いですねえ」
動かないと、と七節が言った言葉は、白く天井へと昇っていった。
『お前は氷妖だと聞いたが』
「ええ。まあ」
『氷妖がこの程度で寒さを感じるのか?』
王城内で暖房設備が無いのは玉座と倉庫と地下牢だけだ。ここはちょうどその倉庫だが、暖房設備が無いといっても一応は屋内。年の半分以上を雪が占めるこの国おいて、この程度の気温では寒いと言い切るにはまだ足りない。
ましてや王国創立以前からこの地に住まう氷妖種族が寒さを感じるには、とても。
「本気で寒いとは思っちゃいませんよ。口癖です。普段から言っておかないと、人に混じって居る時に言葉が出てこなくなるんです」
フードの隙間からわずかに見える口元が笑った。
「貴女こそ言葉に出さないと手遅れになりますよ。寒いと感じるほどではなくとも、そろそろ人間には耐え難い時間のはずです」
言葉とともに差し出された物に、蚕蛾は面食らった。携帯用の酒瓶。
『お前でもこういう物を持っているのか』
「必要ですから」
『必要……』
「なんなら口移しで飲ませて差し上げましょうか」
『結構だ』
気安く差し伸べられた手を払いのけ、差し出された酒瓶を受け取る。中の液体を一口飲んで、蚕蛾は顔をしかめた。
『妙な風味だ』
「嗜好品ではありませんからね。『必要だから』飲むものです。一口だけで効果は十分ですよ」
『そもそも一口分しか入っていなかったが…』
「必要になるとは思わなかったんです」
笑いながら七節は宣った。
蚕蛾はわけが分からない、と嘆息して、それきり会話が途切れた。

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