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■ ヒューフロスト王城、引き続き城内各所

ヒューフロスト王都アレクティスを訪れた一行は、冒険者の基本行動として冒険者ギルドと諸商店に向かうことになっていた。
と言っても、大人数で街中を歩くのは少々合理的ではない。せっかくの人数を利用して、二手に分かれることになった。ミルド、シオン、フィーナ、アンジェは冒険者ギルドへ。あおい、リフィル、ルミナス、ジル、キサラは各商店へ。待ち合わせ場所が王城になったのは、この街らしく一番分かりやすいこともあるが、待つのに困らないという理由があった。一行にはヒューフロストの王と面識があったからだ。狙い通り、事情を聞いた国王は待合場所として王城の客室を一室貸してくれた。
その客室は、今は見事に霜と氷の祭典会場となっているが。
「さて、今すべきことは何でしょう? 1.買出し班と合流する。2.凍った人たちを助ける。3.犯人を探す」
「ひとまず4の防寒対策は終わったわけだが」
部屋に来てから脱いだ防寒着を着なおし、一通りの装備を整えた4人はまだ客室に居た。理由は3択を出したアンジェの言った通りだ。
「要するに、まず『何が起こっているのか』知る必要があるってことだろ」
ミルドの言葉にアンジェが頷いた。彼らにとって至上の目標は最初から買出しに行った仲間と合流することだろう。そのためには城から出る手立てを考えなくてはならない。だが、目の前に氷に閉ざされた人々が居ては放ってはおけない。助けるとなればこの状況を仕組んだ者を突き止めなければならない訳で。
一つでも全てでも、成そうするには先ず今どのような状況なのかを知る必要があった。
「この術はどうやら城全体に及んでいるようだ。満遍なく行き渡らせるとしたら、発生源は中央棟か?」
凍った窓の外を眺め、シオンが言った。中庭に面した窓の外には城を構成する他の建物が見える。他の建物の同じく中庭に面している窓には、やはり同じく凍りついた形跡が伺えた。
「シオンが乗り気なんて珍しいな。こういうのは面倒くさいんじゃないのか?」
「面倒だが、仕方ないだろう。こんな光景を見せ付けられたんじゃあな。それに、国に恩を売るのも悪くない」
「ともかく、いきましょー。中央は…あっちでしたよね」
「気をつけろよ。さっきまではただの城だったが…、今は何が起こるか分かったもんじゃないからな」
剣を構えるミルドの言葉に、それぞれ武器を握り直し、頷いて応えた。
一行は、フィーナが示した廊下の先へ歩き出した。



「ひとまず、ここに居るのはまずいですね」
中央演算室にて、ペルシスはうめいた。
奇跡か相手の気まぐれか、ペルシスとカレルベインは冷凍保存の憂き目を逃れることが出来た。だが、敵と思しき“不可視の竜”は二人がここに居ることを知っている。またいつ現れるとも限らない。
「我々のように凍らずにすんだ者も居るかもしれません。何をするにも、ここを出るのは得策だと思います」
「では、参りましょう」
「殿下は後ろでお願いします」
「……はい」
羽根剣を構え、カレルベインは前を行こうとするペルシスにきっぱりと釘を刺した。
「召喚型の魔術師は、召喚精霊の知覚にて索敵が可能です。後ろから何かが来た場合、私よりもペルシス様のほうが感知が速い。故にこの陣形なのです」
「あー、ありがとうございますカレル…」
彼女なりの最大限の慰めなのだろう。何故だが周囲の冷気が強まったような気がしながら、ペルシスが内政局本部の廊下を歩いていると。
1階へ通じる階段室の前で、カレルベインが足を止めた。
「どうしました、カレル?」
「そこに誰か居ます」
驚きと共に、ペルシスはカレルベインの視線の先を見た。開け放たれた階段室の扉の蝶番がある側の壁、その向こう。
緩やかな緊張感の中、相手が観念したように話しかけてきた。
「…無事だったようですね。ペルシス王甥殿下、ワイスシュタイン内政局長猊下」
「《七節》!?」
カレルベインはその声に聞き覚えが無く胸中で首を傾げたが、ペルシスは声の主を知っていたようだった。互いに声に驚きの色が含まれて、カレルベインは再び首を傾げる。だが、その名前から一つだけ解ることがあった。階段室に居る者は、宰相ミッドガルドの私兵であるということだ。
ペルシスは尋ねられるまま自分達の身に起こったことを話し、七節に尋ねた。
「七節、あなたが王城に居るとは思いませんでした。陛下やミッドガルド様はご無事でしょうか?」
「ファーレンハイト様やミッドガルド様の安否は私にも判りかねます。この氷の中では、居場所も容易には知れません。最も、無事でないことを想像するほうが難しくはありますが」
微かに七節は笑ったようだった。その笑みは自らの不敬を自嘲したのではなく、心から彼らの無事を確信しているからこそ出た色を含んでいた。
「現状、私が確認した氷に閉ざされずに動き回れる者は、あなた方の他に氷刃騎士団長アーダルヘイル・ワイスシュタイン閣下とその部下2名、それと我々私兵の一人《白蟻》です。氷の障壁には魔術の通信を阻害する力があるようで、連絡がつかない者が凍ってしまったのか外に居るのか判別がつきません。あるいは、居場所によっては城の内部でも通信が出来ないのかも」
「なるほど…。七節殿、もしよろしければ共に行動しませんか? 陛下や連絡の取れない私兵のことも、探すなら人が多いほうがいい」
「それは大変ありがたい提案ですが、すみませんペルシス様。私のやることは独りの方が都合が良い。代わりと言っては何ですが、氷刃騎士団の者達が向かった場所をお教え致します。ここから引き返して、反対の階段から向かえばちょうど合流できると思います」
そう言って、七節は氷刃騎士団長達が向かったという城の中央棟正面ホールを示した。今居る場所とは、道順としては真反対だ。
情報に礼を言い、ペルシスとカレルベインが歩き出そうしたとき、ちょっと、と七節が呼び止めた。
「あなた方は“不可視の竜”に遭ったのですよね。その時、あなた達はどうしたのですか?」
「応戦の覚悟を決めたのですが、戦わず仕舞いで…」
「殿下の身を一番に考え、私が前に出ました」
カレルベインの言葉に、七節は数瞬考えこむように沈黙した。そして、応える。
「…なるほど。ではお二方、くれぐれもお気をつけて」
そう言い残し、階段室にあった七節の気配が消えた。立ち去ったようだ。結局彼は、二人の前に姿を現すことは無かった。



「ここも駄目か…」
内政局の一室を見ていたアーダルヘイルはやや大きめの声で独りごちた。
無論、自身の言葉の通り、部屋に居る祭務官や騎士はアーダルヘイルを除き一人残らず凍りついている。独り言を言う意味など無いが、心のどこかで呟きに応えてくれる者の存在を期待していたのかもしれない。それほどまでに、普段見慣れた人や物が氷に閉ざされている光景は痛々しいものだった。
「隊長。外部との通信を試みましたが、出来ませんでした」
駆け足で部屋に入ってきたペイルグリーンが、乱れた息を整えながら報告をした。
「風妖精の送信も、モノリスによる通信も無理でした。モノリスは出来るだけ近い場所を探したのですが…」
そこで言葉が途切れる。ペイルグリーンは短く途切れる呼吸を抑えるように唇を噛んだ。胸に手を当て動悸を抑えているように見えたが、その手首を更に握り締めるようにもう片方の手が添えられている。その手に下には伝令官の証である3級祭務官の腕輪があった。伝令官の唯一の役割と言える、モノリスによる通信管理に必要な腕輪だが、今は無力だ。
「気に病むなペイル。城内をくまなく覆うような術だ、他の魔術干渉を遮断する効果があっても不思議ではない。内部で完結する術が使えるだけまだマシだろう」
言いながらアーダルヘイルは魔術書を開いた。使役する妖精の名を唱え、その力を呼び出す。魔術書から飛び出したスカイブルーの光をまとう妖精が、光の粉を振り撒きながらペイルグリーンの周りを回る。アーダルヘイルが持つ、鎮静と精緻を与える薄荷の精ミントだ。
「あ、ありがとうございます。隊長…」
「礼を言いたいのはこっちのほうだ。独りで遭っていたら俺も落ち着いては居られなかっただろう…。お前達2人が居てくれたから、どうにか取り乱さないように努めることが出来たんだ。……………って、そういえばゲンはどうした?」
少々の気恥ずかしさを感じながら話していたアーダルヘイルだったが、部下の一人の姿が確認できず、それが吹き飛んだ。
ペイルグリーンも言われてからようやく気づいたようで、「へ?」と間の抜けた声と共に辺りを見回す。もちろん凍っていない者は二人しか居ない。
「わ、私はてっきり団長と一緒に居るものだと…」
「俺もお前と一緒に居るのかと思っていた。まずいな…こちらはまだマトモに状況も把握していないというのに」
アーダルヘイルが慌てて部屋を出ようとすると、出口で何かにぶつかった。後を追おうとしていたペイルグリーンの足が止まる。
「お前は、何をやっているだ。ゲンジュ=セタ・ルーガル!」
「…いきなり叫ぶなんてどうしたんですか団長。更年期?」
「とりあえず謝ったほうがいいですよ、ゲン。今の余計な一言も含めて」
扉は開きっぱなしなため、ぶつかるものなど他に無い。ちょうど同じタイミングで部屋の出入口に向かってきたゲンジュに、アーダルヘイルは呆れを込めてフルネームで怒鳴った。ペイルグリーンの言葉に、ゲンジュは不思議そうに首を傾げながら「すみません」と呟く。
「まったく、勝手に居なくなるんじゃない」
「向こう見てました。で、これを拾って」
かみ合わない会話によほど嘆息したくなったが、ゲンジュが差し出したものを見て、アーダルヘイルは漏れかけた息を飲み込んだ。
淡いピンク色の花弁。雫の形のようで、端にわずかに切込みが入っている。この国でこの花が咲くことは無いが、遥か南東の島国ではこの花が咲き乱れる場所があるという。
「桜花精の花びら…トリス=トリス王甥殿下の精霊のものですねっ!」
横から見ていたペルシスが声を上げる。彼の言う通り、この花弁はトリスの持つ剣に宿る精霊の力の欠片だった。これがあると云うことは、トリスは精霊を使ったということになる。
「周囲に殿下のお姿は?」
「なかった。開いた窓の近くにこれが。その窓も、硝子がはまったみたいに氷で塞がれていた」
「開いた窓から逃げようとしたのでしょうか?」
「窓を開けて入ってきたものに対抗しようとしたのかもしれない」
「ひとまず、全力で対抗しなければならないものが居る可能性が出てきた。今以上に気を引き締めて進もう。もしも何かが居るのだとしたら…一刻を争う事態だ」
落ちていた花びらから予想できることを言い合うペイルグリーンとゲンジュを、アーダルヘイルは中断させた。予測を立てることは必要だが、立ち止まっている場合ではない。二人は団長の言葉に頷いた。
「では…。この内政局棟を無事な者が居ないか見回りながら、中央棟に行ってみましょう。これほどの魔術を城全体にかけるとしたら、術式も大掛かりなものになるはずです。そして術を城中に行き渡らせるなら中心からかけたほうがいい。中央には正面ホールや謁見室などの大掛かりな術を展開させることが出来る広い場所が多くありますし」
「そうだな。では、これより我々は王城中央を目指して進む。敵の気配に気を配り、敵の痕跡にも目を光らせろ。無論、城の人々の様子にもだ」
「はい、団長」
「了解」
ゲンジュとペイルグリーンが敬礼をし、3人は部屋を後にした。



「ただの洞窟だったらもうちょっとマシだったんだけどな…」
「氷は在る物をそのままの姿で侵食してしまう。冒したものをそのままにね。姿ごと奪っていく炎とはまた違った怖さがあるのよ」
客室を出てから、幾つかの部屋を確認しながら一行は長い廊下を進んでいた。歩を進めるたびに目に入る霜の降りた床や壁、凍りついた窓、そして氷柱に閉じ込められた人々に、寒さによる体力の消耗とは別の部分で疲労がつのる。
ミルドの呟きに、アンジェは独り言のように応えた。氷を扱う魔女としての、恐らくそれは、彼女にしか言うことの出来ない言だった。
城の中央を目指し歩いていた一行だったが、各棟を結ぶ渡り廊下まで来たとき、妙なことに気がついた。
彼らが居た客室と外政局本部を主とする南棟に居た人々は、一様に現在一行の居る廊下の方を向いていた。客室で起こったことと同じことが起きていたとして、冷気を運ぶ突風に気づいた人々がその風上を振り向いた、いうことが解る。
だが、3つの棟へと続く道が交わるこの場に居る人々は。
皆、“内政局のある東棟を向いていた”。
「これってつまり、東の棟が魔術の発生源ってことですか?」
「魔術様式についてはオレも詳しくはないからどうとも言い難いが」
三叉に分かれた廊下の、それぞれをシオンは見渡した。丁字の廊下は直線にて東と南を、直角に交わる通路が中央へと延びる。各棟の規模の違いはあれど、外から見た渡り廊下の造りは同じだった。
「魔術に限らず、周囲に拡散させるなら四方八方に撒き散らすか、周囲をうまく舐めるように力の流れを作るんじゃないか? 前者は遮蔽物の一切無い場所向き、後者は限定的かつ入り組んだ場所向きだ。ここは東西南北にある建物が一本の廊下で繋がっているから、後者だったのかも知れない」
「その場合は、私たちの後ろに発生源があったとか間の抜けた展開が…」
「ここに来る前に後ろも確認したから、それは無いだろ」
ささやかな冗談を真面目に返され、アンジェは少しだけむくれた。もちろん後ろに発生源があったとしたら、客室を出た時点で彼女が気づかないはずがない。
ミルドたちには焦りがあった。予測不能の事態と、あらゆるものが氷に閉ざされた光景を見せ付けられるストレス、だがそれ以上に行動出来る時間に期限があるからだ。氷を操り魔物の血を持つアンジェには縁の無いことだったが、生身の人間である彼らは零下二桁に達する状況で長時間は動けない。より温度の高いものを優先的に襲う冷気の魔力が遍在しているおかげで、火を使うことも出来ないのだ。進む道を間違えたら、引き返す時間は無いかもしれない。そして迷う時間も無い。
どちらに進むべきか、決断の時が迫り自然と場に沈黙が流れる。
と、その沈黙の外から近づいてくる足音があった。
一行はいっせいに音の響く先を見た。武器を握る手に自然と力が入る。
廊下と東棟を隔てる扉、今は開いているその出入口から、草色と白の二重合わせという出で立ちの男が現れた。年のころは二十代の半ばか三十前くらい。やや重たげなまぶたが男を幼いようにも年増したようにも見せている。
男は鳩羽色の目を瞬かせてミルドたちを見ると、「あっ、」と驚きの声を上げる。
「君達、生きてるよね。寝てないね?」
「いくらなんでも見りゃ解るだろ。そういうあんたも凍ってはないだろうが、……何者だ?」
剣を構えたままミルドが問うた。シオンの言う通り風の流れで術を拡散させたのならば、術者は風上に居ることになる。この場においての風上は東棟だ。この男も、それを承知していて風下から来たミルドたちに警戒していないのだろう。
男は向けられた疑いが予想外であるように目を丸くした。嫌悪は感じていないようだ。
「僕を疑ってるのかい? ……あー、余所者なら仕方ないか。これ、一応氷刃騎士団の制服なんだよ。僕はヘキサス・イセイル。氷刃騎士団衛生兵部隊所属の衛生兵です」
「騎士…なのか。なんで一人なんだ? 他のやつは居ないのか?」
「城に常勤してる人達については、こっちが訊きたいくらいだ。僕は遺跡調査の学者団や発掘部隊の護衛を主に担当しているから城のことには詳しくない。今日も報告に上がった学者団にくっついて城に来たんだ。突然のことで、自分以外は守れなかった」
戦ったり守ったりは不得手でね、とイセイルは白いケープに中ほどまで隠れた肩掛けの大きな革鞄を撫でた。各所に付いたポケットの一つから白い包帯とピンセットが見える。その鞄が衛生兵としての彼の武器なのだろう。
「君達は誰か動ける騎士や祭務官を見なかったかい?」
「すまんがオレ達が来た道には居なかったぞ」
「いや、いいんだ。これを防ぐとなったらそれなりの能力が要るだろうし、そうでなくては戦力として意味がない」
「戦力を探してるですか?」
「ああ。犯人が残していった物があってね、それを取りに行く人を探している。僕自身で取ろうとも思ったけど、何か仕掛けでもあったら存在を知る者が居なくなってしまうだろう?」
「その戦力、俺たちじゃ役者不足か?」
問いかけに、イセイルは驚いたようだった。確かに外見だけ見れば、冒険者でも少年少女の集まりにしか見えないだろうが。
数瞬の黙考の後、尋ねてくる。
「君達、本気かい?」
「この冷気を防ぐ程度の腕は必要なんだろ? それなら、今動けている俺たちは少なくともその条件は満たしてる」
「それはそうだけど…。騎士としては、国のことに余所の人を巻き込ませるのは申し訳ないな」
「ここに居る時点でもう十二分に巻きこまれてる」
「そうです。それに、こんな状況じゃほっとけません!」
シオンの冷静な指摘とフィーナの熱意に折れたのか、イセイルはじゃあ仕方ないな、と小さく肩を落とした。困ったような笑顔ではあるが、それは落胆ではなく安堵の仕草に見えた。
「じゃあ、改めてよろしくね。ええと…」
「俺はミルド。そっちのがシオン、フィーナ、で…後ろに居るのがアンジェだ」
「そう。じゃあミルドくん」
笑顔で差し出された手に、ミルドは応えようと手を伸ばした。と、伸ばしかけた手を横から杖で叩かれる。大した威力ではなかったが、冷えた手に与えられる衝撃は通常の5割り増しくらいに感じられる。
「何してんだよアンジェ!」
「そいつに触っちゃ駄目よ、ミルド君」
涙目で抗議するミルドに構わず、アンジェは牽制するように杖をイセイルに向けた。
「その人、魔術を使ってる。それも幾つも。どれがどんな効果なのかまでは判らないけれど、今も何かを発動させて、それを身にまとっているわ」
「わあ、すごいね。大した目だ」
軽い調子で拍手をしているイセイルをアンジェが睨む。
「何故そのことを黙っているのかしら? もしかして、言えない様な術を使っている?」
「目だけじゃなく、口も上手いみたいだね」
「ふざけないで」
「それはお互い様じゃなかい? 君ほどの目ならば、完全でなくても術の大体の効果や範囲は分かるはず。僕の術は攻性じゃないし、範囲は僕自身に限定されている。護符なんだ。幼い頃は身体が弱くてね、父が呪いを仕込んだんだよ。よほど目敏い人じゃなければ気付かれないから普段は黙っているんだがね」
指摘に、アンジェは黙って杖を下ろした。確かに詳しくは判らなくても、それが城を凍らすような術でないことは分かっていた。分かっていて、誤解させるような指摘の仕方をしたのもまた確かだ。
黙ったまま歩き出したアンジェに、誰も声をかけることが出来ず歩みを見送る。数歩進んでから、アンジェは振り返った。ややばつが悪そうに。
「…なんで止まってるの。犯人の忘れ物を取りに行くんでしょう? ほら、みんなも歩いて。そこのイセイルとやらもさっさと案内しなさい!」
「はいはーい」
「じゃあ、行こうか」
呼ばれてミルドが、続いてイセイルが歩き始める。その様子を眺めながら、歩き出す前にシオンはぼそりと呟く。
「…冒険者に大切なこと」
「? なんですか?」
その呟きを聞いていたフィーナが、動き出した足を止めシオンに尋ねた。
「“信じること”だそうだ。冒険に必要なのは疑うこと、だが、冒険者は信用が何よりも大切なんだと。依頼者が冒険者にする信用もそうだが、信用を得るには先ず冒険者が依頼者を信じなければ始まらない。程度の問題もあるだろうけどな」
「難儀なことです」
「まあな。万が一のときにどうにも出来ないようじゃ、信じるのは難しいだろうが………アンジェにはどうにも出来ないことなんてない筈なんだがな」
それだけ呟き、フィーナとシオンも後に続いた。



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