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前回にも増して長いです。
ちょっと書いてみたとか言えない…。




本当に、色々なことがあった。
先刻までの騒がしさがすっかり消え去った玉座の間は、やはり初めてこの席に座ったときと同じように広い。
今日は特別な日だった。
今はもっと特別な時間だった。

「御機嫌よう、国王陛下」

だからきっと。

暗がりに輝く紅い双眸。真っ直ぐに向けられたその瞳の中に、映りこんだ自分が見えたような錯覚があった。

今会うのは、自分にとって特別なものだ。

王の生と死を象った少年は、静かに一つ礼をした。



「ラプレツィア、陛下はこちらにいらっしゃいましたか?」
入ってくるなり概ねお決まりの科白を口にする男に、ラプレツィアは資料を見ていた顔を上げ「いいえ」と首を振った。
「そうですか…。では万が一ここに来た場合には、ミッドガルドが探していたと伝えて下さい」
「はい。分かりました」
「あ、それと」
ミッドガルドはつかつかとラプレツィアの執務机に歩み寄り、彼女の見ていた資料を覗き込んだ。ラプレツィアが長官を務める内政局では今、これから来る冬に備えた資源の管理を考えていたところだ。
「今年の冬は、半ば頃から薪が不足します。本格的に雪が降り出してから伐った木では水分が多すぎて使い物にならないでしょう。なので、雪虫の月が終わるまでに薪の調達を終わらせるように各地に伝えて下さい」
「はあ…」
「詳しくはケルビム6世時代の気象年鑑を。今年の夏と天候が酷似しているはずです」
ミッドガルドの言葉通り、過去の年鑑に記された記録と今年の気象録を見比べてみるとよく似ていた。その年の冬は平地の冷え込みの割りに山の気温が高く、徐々に融けた雪が木々に吸い上げられていたということらしい。
内政局の人でもないのによく気象年鑑を覚えていたものだ。そう言おうとしたときには、もうミッドガルドの姿はなかった。
この状況では国政は王の所在の二の次のように見えてしまうではないか。ラプレツィアはため息を吐く。彼らしいといえばらしいのか。
しばらくして資料室から戻ってきた局員に、先程のことを広報局に伝えてくるように言い渡した。
局員が執務室を出て行く直前、ラプレツィアのほうを振り返って言った。
「そういえば、ラプレツィア様は明日の式典に向けてすることは無いのですか? さっき中庭で旦那様が行進の指揮を執っておられましたよ」
「…私達は見えないところで国を支えるものです」
残念そうに出て行った局員を見送り、もう一つため息を吐く。解っている。彼が言いたかった事はそう云うことではないのだと。
夫が大軍の行進指揮を執っている。それはさぞかし見惚れる光景であろう。明日の式典には彼女自身も出席するが夫とは待機場所が違うため、本番の勇姿を見ることはできない。
「少しだけなら…」
ラプレツィアの呟きは、置いてけぼりにされた今年の気象記録帳だけが聞いていた。


明日の式典のためにわかに活気付いている城内の一室で、その部屋は驚くほどに静まり返っていた。
部屋に居るのは国王の甥にして現在王位継承第一位の王甥ペルシス・パルと評議会議員の男。内密に話したいことがあると言い、議員の男は王甥を呼び出した。
「で、私に話したいこととはなんです? コルネル殿」
鮮やかな金糸の髪をかき上げて、ペルシスは向かいに座る男に微笑みかけた。未だ成人してひと月ほどしか経っていないというのに、この王甥の振る舞いには評議員達を威圧するものがあった。
怯みかけた気を押し込んで、コルネルは話を切り出した。
「単刀直入に申し上げます…ペルシス殿下は王位に興味はございませぬか」
「…穏やかではありませんね」
ペルシスがちらりと後ろの戸を見やる。聞き耳を立てる者が居ないか確かめたのか、それとも王の誕生式典の前日にこんな話をするコルネルを咎めたのだろうか。
「今の陛下は良き王だと、身内の贔屓が無くともそう思いますが?」
「それは我々もそう思いますとも」
重々しい同意。だが、コルネルの目には険しい光があった。
「ですが…。幾ら良い王だったとしても、いつ倒れられ、亡くなられるかもしれないのでは民も不安になりましょう。即位した時点で、陛下は二十歳まで保たないと言われておりました…」
「………」
「明日には陛下はその二十歳を迎えます。ですがこれは奇跡に等しき事。奇跡だけでは国は支えられません」
「…それで、私ですか」
語るに落ちていたコルネルが顔を上げると、氷のような眼差しをこちらを見る王甥と視線が合った。
コルネルは震える声で続けた。
「ペ…ペルシス王甥殿下はあの宰相ミッドガルドに認められた聡明さと聞きます。あなたならばファーレンハイト陛下にも劣らぬ王となりましょう」
ペルシスはわずかに片眉を上げた。
「私が『真の王族』ではなくとも構わないと?」
「ふさわしき者に王位が与えられるのならば、血のみに囚われるのは愚かなことです」
コルネルが話し終わると部屋に沈黙が流れた。
言うべきことは全て言った。お世辞でもなんでもなく、確かに賢いこの王甥ならば今の王に疑問を抱いているはずだ。
祈るような心地で沈黙が終わるの待っていると、向からふっと笑みが聞こえた。
「なるほど。貴方のお気持ちはよく解りました、コルネル殿」
氷の目は消え、優美な笑顔がこちらに向けられている。ペルシスの表情に、コルネルはつられて口が緩んだ。
「…! では殿下、」
「貴方はファーレンハイト陛下に反逆する意思がある、とね」
緩みかけた顔のまま、コルネルは固まった。
ペルシスの声と共に戸から黒服の兵士が入ってきてコルネルを取り押さえた。床に押し付けられたコルネルが見上げると、ペルシスの眼差しは氷に戻っていた。
「さて、色々と聞きたい事はありますが、とりあえず貴方が言った『我々』の中に入る貴方以外の方の名前を教えていただきましょうか?」
「なぜ王位を拒むのです! 殿下ならば気づいておられるはずだ、あの王では駄目だということがっ!!」
「拒む? 私にはそれが与えられる可能性などこれっぽちもありませんよ」
小馬鹿にしたようにペルシスは微笑んだ。
「お喋りはいいから、とっとと吐いてくれませんかねえ? それとも、このままミッドガルド様に引き渡したほうがいいのでしょうかね?」
「…ミッドガルド? その男がなぜ……、…っ!? そうかこの黒い兵士は…!!」
この国の軍装に黒は無い。その黒を看板として背負っているのがミッドガルドであり、彼の私兵もまた黒を纏っているのだ。
「では、後はお任せいたしますよ《蟷螂》、《蜻蛉》。ミッドガルド様に宜しくお伝え下さいまし」
「…はい」
「お待ち下さいペルシス様! あなた方はあの男に騙されているのです! 奴は…」
喚く評議員の声を断ち切るように、部屋を出たペルシスは強く戸を閉めた。物騒な騒ぎの代わりに、式典に向けた賑やかな騒がしさが耳に戻ってくる。
無駄な時間をくったことに憤りながら、ペルシスは自身の明日の準備に戻っていった。


騎士団が行進練習をしている中庭を臨むテラスでは、一人の少年と中年の騎士が手合わせをしていた。練習用の木剣が打ち合う音が響く中、二人を眺める若い女騎士は気が気じゃない様子だった。
「はぁっ!」
騎士の気合とともに、少年は勢いよく後ろに吹っ飛ばされる。
「トリス=トリス様!」
女騎士は悲鳴じみた叫び声をあげながら少年に駆け寄った。が、倒れた少年に手を差しのべようとした直後、少年は素早く起き上がり女騎士を制止する。
少年の目は、今だ正面にいる騎士に向けられていた。
「まだ…大丈夫。センスウは手を出さないで」
「しかし…」
センスウが止める間も無く、トリス=トリスは木剣を引きずって駆け出していった。
トリスと騎士の距離が半分ほどに縮まった時、剣を引きずる音が消える。剣先を地面すれすれの所で滑らせて距離を詰め、トリス=トリスは騎士の懐に飛び込んで木剣を振り上げた。
ガン、と重い音がして、トリスの剣が受け止められた。まだ10歳にも満たないトリスの力では、片手しか使わない騎士の剣でも突破するのは難しい。先も、振り下ろした剣をすくい上げられて吹っ飛ばされてしまったのだ。
だからこそ次は一撃が入れられるように、トリス=トリスは考えた。
「…えいっ!」
振り上げて止められた剣を、逆袈裟に振り下ろした。
剣先が少しだけだが、騎士に当たった。ちょうど騎士のすねに。
「~~~~~っっつ!!」
「やったぁ…やっと一回当たった!」
すねを抑えてうめく騎士と、飛び跳ねて喜んでいるトリス=トリスを見て、センスウは非常に複雑な顔をした。
とりあえずトリスの頭を撫でてあげてから、騎士の元へ謝りに行った。
「申し訳ございませんノクト様。明日のこともあり、トリス=トリス様がやたらと剣術の稽古に張り切っておりまして…」
「構いませんよセンスウ殿。男の子が元気なのはいいことじゃありませんか」
はっはっはと笑っているノクトに、センスウは苦笑いで返した。
元々トリス=トリスは内気な性質で運動をするよりは勉学に勤しむタイプだったため、いきなり張り切られて手合わせを請われても、護衛のセンスウ達にはどの程度手加減すればいいのか分からなかった。
そんなときに手合わせを買って出てくれたのがノクトだ。新兵の教育も行っている彼はこういうことにも慣れているらしく、困りきっていたセンスウにはありがたいものだった。心労はあまり変わらなかったが。
「それにしてもトリス=トリス様、何故いきなり剣を習おうなどと思ったのです?」
前までは剣術の稽古を泣きながらやっていたのに、センスウが尋ねると、トリス=トリスは持っていた木剣を抱きしめて頬を赤らめた。
「あの…ね、センスウ。僕には兄さまやミッドガルドさまのような魔法の才能はないから…、だから剣を仕えるようになって、陛下のお役に立ちたいんだ。兄さまと僕で能力を補い合って、陛下のために…それが、僕たちの役目だから」
「トリス=トリス様…」
「よくぞ言われました、トリス=トリス様! まだ幼いのに、騎士の心得がよくわかってらっしゃる。あなたは騎士の鑑ですぞ!」
「…ノクト様。トリス=トリス様は王位継承2位の王甥です…」
「いいえセンスウ。僕と兄さまは、陛下の騎士ですよ」
屈託なく笑う主に、センスウはやれやれと溜息を吐いた。


柱の影に隠れていたのは、ペルシスもよく知った人物だった。内政局のラプレツィアだ。
何故隠れているのか、ペルシスは彼女の目線の先を見て納得した。騎士団の指揮を執る彼女の夫がいたからだった。
「…ラプレツィア殿」
「ぅわあっ!? ペリーですか。驚かさないでくださいな」
「貴女こそあまり怪しげな挙動は慎んでください。ついでに、その呼び方も辞めてください。私ももう一人前なのですから」
ごめんなさいと誤る女性が自分よりも一回りも年上だとは、ペルシスには信じがたいことだった。彼女は最初からこんなだったが。
「でも、どんなに年を取っても私から見たら殿下はいつまでも可愛らしい子供のままですよ」
「………私からしたら貴女はいつまで経ってもおばさんと呼べそうにありませんね」
「まあ、褒めないでくださいなペリー」
ラプレツィアは照れ隠しにペルシスの肩を叩いた。幾ら国政の上位仕官でも、臆面もなく一国の王族に手を上げられる彼女はある意味すごいとペルシスは肩をさすりながら思った。無論褒めてはいないのだが。
「で、貴女は明日の準備などは行わないのですか?」
明日は国王ファーレンハイト17世の二十歳の誕生式典がある。彼女の夫はその式典のために行進練習をしているのだが、彼女自身は何かしている様子もない。
「あら、国政機関で目立って何かをするのはうちのダルフとマールだけですの。特に祭務官は聖服を着て立っているだけですから、用意も何もありませんよ。ペリーもそうでしょう?」
「そういえば…そうでしたね」
この国では王族の誕生祝いは15の成人式典を除き基本行われない。昔は毎年行われていたようだが、あるとき一年経っても終わらない酷い寒波が来て国の存続が危ぶまれた時期に時の王は式典を行わないことにしたのだ。その後寒波の余波を含めた苦難の時期を乗り越え以前の豊かさをとり戻したとき、その記念と王への感謝を込めて誕生式典を復活させた。現在では寒害が続いた期間である5年と復活した式典の時の王が丁度50歳だった事もあり、王族の誕生式典は5の倍数の歳になったときのみ行われている。
現王の前回の式典も、ひと月前の自分の式典も成人式の特別なものだったため、ペルシスはすっかり忘れていた。
「そういうペリーこそ何をしているんです? あなたも陛下をお探しですか?」
「いえ、私はミッドガルド様を探しています」
「あらあら、私先程お会いしましたよ。陛下を探していたみたいで、内政局の執務室に来られたんです」
「次にどこに行くとか、聞きませんでしたか?」
「聞いてません」
ペルシスが唸る。探し人の情報であることは確かだが、手がかりどころがみつけ難さを後押しするような内容だ。
「どうしましょう…」
「…そうですね、」
「兄さまー!」
後ろから聞き慣れた声がしてペルシスは振り返った。木剣を抱えて走り寄ってきたのは弟のトリス=トリス、そしてその後ろに付き従うセンスウだ。
「あ、ラプレツィアさまこんにちは。あのね兄さま、さっき剣の稽古をしていて、手合わせで勝ったらミッドガルドさまが褒めてくれたんです。僕もはやく兄さまのように陛下のお役に立ちたいです」
「あなたが勝ったのですか? トール。それはすごい。…ところで、ミッドガルド様とはいつ、どのあたりで会ったのですか?」
「直ぐそこの角を曲がった先です。急いでおられるようでしたが…ペルシス様は、ミッドガルド様に御用がおありでしたか?」
トリス=トリスの代わりに答えたのはセンスウだった。
センスウから聞いたところによれば、トリス=トリスが王宮騎士団のノクトと手合わせをしていたのは今ペルシス達が居る中庭に面した廊下の斜め側に見えるテラスのところで、手合わせが終わった後でペルシス気づいてこちらに来たのだそうだ。途中、ここから死角となる廊下の曲がり角の向こうでミッドガルドと会い、別れた。
もちろんトリス=トリスとセンスウもミッドガルドの行き先を聞いてはいない。
「結局は虱潰ししかないと云うことですか…」
「兄さま、魔法で探せばいいのではないですか?」
「トール、私の力ではミッドガルド様をみつけることは出来ないのですよ」
「じゃあ陛下を探せばいいです。ミッドガルドさまが陛下を探しているのなら、陛下のもとに行けば会えるでしょ?」
「…あぁ、なるほど」
言われてみれば確かにそうだ。前に視野が狭い事を指摘されたことがあり、改善するように努めていたつもりだったがまだまだのようだ。
ペルシスはベルトのホルダーに入れていた純白の魔術書を取り出し頁を広げた。
「カサブランカ―――――」
呼び声と共に、白い精霊が魔術書から現れる。精霊は主人の望むものを探すため、白光の軌跡を描いて飛び立った。


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