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03 2009 / 12
ミッドガルドの私兵の話。
実は前々回の『国守の蛇』から続きのつもりで書いていましたが、あらぬ方向に話が行ったので別タイトルにしました。ヒューフロストの話(ミッドガルドの話4:黒い人の話6)/私兵の話、といった割合です。自分でも訳が解りません。
現在本家でやっているキャンペーンに地味に掛かってきていますが、あくまでモブ話です。
百足さんがっつりお借りしました。





『ちょっと肝試しに行ってほしい』
唐突に言われた一言に、場の空気がきっかり一秒停止した。
いや、正確には停止したのは言い渡された三人だけだった。言った蚕蛾は特に不穏を狙った様子もなく平然としているし、その命令を申し付けたであろうミッドガルドは衝立の奥にある執務机で淡々と事務作業をしている。
「すみませんが意味がわかりませーん」
黒い遮光スーツに身を包んだ蜻蛉が、挙手と共に軽い調子で言った。挙げた手をひらひらと動かして、声の調子同様落ち着きの無さを全身で表現している。
隣に立っている蟷螂も同調するように頷いた。声にこそ出してはいないが、表情はしっかりと困惑している。
反対隣の百足はどう反応するべきか悩んで、しかしそんな様子を微塵も見せずに「すみません、もう一度お願いします」と返した。
三者三様の反応を認めてから、蚕蛾は『では』と一息置いて改めて命令をしなおした。
『ここにある山吹色の菓子的なものを境界伯シュバルツシュタイン卿に届けてほしい』
「なるほど。それは大変分かりやすい命令ですね。…ですが何故先ほどはあのような言い回しを?」
『例えばの話だが、赤ずきんがおつかいを頼まれたとしよう。祖母のお見舞いに行ってほしいと言われて、承諾したとする。ところが祖母の家は山越え谷越え滝を登って獅子の荒野を抜けた先だ。お前たちが赤ずきんなら確実に怒るだろう?』
「それほどアレなところなんですか、その…境界伯というのは?」
『たとえ話だ。安心しろ』
蚕蛾は一つ咳払いのような仕草をした。実際に咳をしたわけではない。彼女の喉が声を発して不調を起こすことなどありえないからだ。
『まあ、なんだ…一種の通過儀礼みたいなものだと思ってくれればいい。私兵は皆、一度はシュバルツシュタインに挨拶に行くことになっているんだ。蜻蛉と蟷螂に行ってもらわねばと思っていたところに百足が入ってきたから、3人揃って行くといい』
言いながら、当人も説明に釈然としないものを感じているのか複雑な表情をしていた。当然である。私兵と言えば形式あるもののように聞こえるが、実際は雇い主自身も存在を認めぬ裏家業的集団なのだ。姿など知られないに越したことはない。
それがわざわざ挨拶に、しかも名のある貴族にとなると、それなりの理由があるのだろう。だが理由は明言できない…いや、蚕蛾にも知らされていないのかもしれない。適切な言葉を捜してどうにか説明しようと考えこんでいた蚕蛾は、諦めて手持ちの荷物を蟷螂に差し出した。蟷螂は無言で受け取る。
『とにかく行って会ってこい。向こうがこちらを確認しさえすればいい』
「それってつまり、たどり着けないこともあるってこと?」
『いや、シュバルツシュタインの領内に直通のモノリスがある。妨害が入るほどの距離も無い』
「中身が中身だから、妨害はなくとも内密にってことですかね」
『ちなみに荷物の中身はパウンドケーキだ』
「まんま菓子!?」
蚕蛾は荷物の包みを半分ほど解いた。見慣れた取ってつきの形状だと思ったら、ごく普通の蔓で編まれた籠だった。籠の中には更にチェックのキルト生地で包まれた蚕蛾曰くパウンドケーキが入っている。
「ヒューフロストでは蜂蜜を山吹色と呼ぶ…」
ようやっと口を開いた蟷螂は、百足に向けてであろう補足らしきことを呟いた。
これ以上事情を聞いてもモチベーションが下がるだけのような気がしたので、3人はさっさと出発することにした。部屋を出る直前、蚕蛾が思い出したように説明を付け足す。
『念のため装備は万全にしておけ。…万が一に使えなかったら、困る』

王城内に設置されているモノリスに向かう道のりで、3人は蚕蛾の使えない発言がどの言葉に掛かっているのかを話し合っていた。
「フツーに武器が使えなくてボクたちが困るってことじゃないの?」
「どうにも語尾が、あたしらに言ってるようには聞こえなかったんですよねえ…」
「考えすぎだと思うよぉ?」
眉をひそめて呟く百足に、蜻蛉は呑気に返す。二人の様子を見ながら、蟷螂はぼそぼそと言った。
「俺たちが使えなかったら、猊下が困る。…そう言っているように聞こえたんじゃないか?」
「それこそナンセンスだよ。だってぇ、ミッドガルド様が居なくなって困るほどボクたちのこと信頼してると思う?」
あんまりな言い方だが、もっともなことを蜻蛉は言う。蜻蛉と蟷螂で半年、百足にいたってはまだ私兵となってひと月と経っていない。そんな3人に“居なくなって困る”ほどの信頼を置くとは思えない。
もっともではあるが…人に仕える者としては、口に出して認めるのは難しいことである。
「裏仕事でもなきゃ、従者が暴動起こしそうな主人ですねえ」
「大抵のやつはそうかもね。バッカみたい」
一段声を低くして、蜻蛉は吐き捨てた。
「プラスでなきゃ、ゼロでも嫌がる。マイナスにならないだけマシだって、どうやったって思いつかない。実際にマイナスになるまでね。そんな都合のいいやつらには理解できないかもね」
前方に見えてきたモノリスに向かって、歩幅を大きくして駆け寄る。懐から出した黒い石を制御装置にかざすと、モノリスは低い起動音と共に転送可能であることを示す紋様を浮かび上がらせた。
追いついた百足と蟷螂が転送点に乗り、起動させた蜻蛉が最後に入って、数秒の後3人はシュバルツシュタイン領に跳んだ。



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