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このブログは企画系創作作品をまとめたブログです。主更新はオリキャラRPG企画になっております。
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小話と呼ぶのもおこがましい、ほぼ喋ってるだけのものです。
サーカス始めるかなり前の話。この時期に今の伯爵が形成されたんじゃないかと思います。
まあ内容はそんな大層なものじゃありませんが。
描写の都合上、地獄の竜は省略してあります。




悪魔を呼び出すには、決められた環境を作り決められた手順に沿って決められた捧を用意しなければならない。
召喚するものが高位になればなるほど環境は厳しく手順は複雑に捧は高価なものになる。
それらの犠牲と危険を冒してでも、願い求める者は悪魔に縋り懇願する。

縋り伸べる手は数多。

届かず消える手もまた数多。

その内の一つが彼に届いたとき、彼は敬意を表して祈願者の元へ現れた。


『我が名を呼ぶのは誰だ―――――』
重厚に響き渡る声は、今まさに現れんとする姿の合図にして祝福の音。
狭い地下室を染める瞬きは触媒より出でて偉大なる者の型を縁取る。
頭の天辺から順を追い、具現化された悪魔の目玉が呼び主の姿を捉えた。儀式典礼に則った黒のローブを纏いグリモワを持った人間。背格好から察するに成人を過ぎた男だろう。深く被ったフードで顔は見えないが、儀式による消耗が見えないことから強力な魔術師であることが伺えた。
久し振ぶりに自分を呼び出すに値する者が現れたのだ。期待と敬意を持って彼はお決まりの口上を述べた。
『人間よ、私に何を望む?』
三つの頭が合唱した瞬間。

ごつん

三頭のうち最も出っ張っていた牛の角が天井にぶつかった。
具現化した姿が思いのほか大きかったらしく、三頭はそれぞれこほんと咳をすると、しゅるしゅると3回りほど小さくなった。
「そろそろいいだろうか」
『あ、ああ…』
一連の動作を眺めていた召喚主は、冷静に尋ねた。応える悪魔は少し恥ずかしそうだった。
『で、人間よ。私に何を望み呼び出した?』
仕切りなおして悪魔は問うた。
大きさこそ最初より小さくなったがそれでもまだ天井に届きそうな程はある。人・牛・羊の3つの頭、それを支える巨躯、両の手に携えられた軍旗と槍は高位の悪魔として見る者を圧倒する迫力がある。
そんな威圧を放つ大悪魔を一通り見回して、召喚主は口を開く。
「何が出来る?」
悪魔がこけた。
『ふっ、搦め手で来るか人間よ。我はアスモデウス、72の軍団を率いる魔界の大いなる王。私は私に向けた敬意に対して贈り物をしたり、乾坤の叡智を与えることが出来る。また人間の魔術師に出来ることならいかなることもやって見せよう』
「……微妙」
『おい今ちっさい声で何か言ったな』
「言ったが何か。俺は別にガチョウ肉なぞ欲しくないから特に敬意は払わんぞ」
『知ってるんじゃないか何が出来るのかっ!! しまいには縊り殺すぞ!!』
「なんだ手持ちの槍は飾りか」
『お~ま~え~は~~~~~っっ!!!』
反射的にアスモデウスが振り上げた軍旗が何かにぶつかり火花を上げた。建築石材に当たったとは思えぬ硬質の手応え。否、ぶつかったのは天井ではない。
振り落ちる火の粉に召喚主は顔をしかめ、アスモデウスは驚きに目を見開いた。
『なんだ…っ!!?』
「気づいていなかったのか」
下を見てみろ、と召喚主はグリモワの角でアスモデウスの足元を示した。
部屋の床には召喚儀式の際にはよく見る魔法円が描かれていた。
“アスモデウスを囲むように”。
『いや、』
あまりの非常識に状況を認識する事を拒んで悪魔は首を横に振る。
『いやいやいやいやいやいやありえないだろ常識的に考えて』
「悪魔が常識とか語るなよ」
『悪魔を上回る非常識が悪魔を語らないで欲しい』
魔術は発想力に寄るところが大きい。だから突飛な発想を持ちかつ実行する力があるこの召喚主は大物に違いないだろうが、アスモデウスは素直に褒めたくなかった。しかもそれを打ち破れない自分自身が余計に腹立たしい。
まさか魔法円を“逆さ描き”するとは…!!
「さあ、俺に逆らえない事も解ったようだし、そろそろ本題入っていいかな?」
『もう勝手にしろ。呼んだからには用事があるんだろうな』
「無論だ。お前、夢を操ることは出来るか?」
少しの間の後アスモデウスは答えた。
『出来る』
色魔の多くは夢魔を兼任している。これは夜のイメージが共通しているというのもあるが、事を起こすには夢の中のほうが都合が良いからというのが理由だ。
「その力を貸して欲しい」
『そんな易い小細工でいいのか。それとも、夢を操るだけで悪魔並みの悪事を成すか』
「具体的な使い方はまだ考えていない。ただ、やりたいことがある」
『ふぅん…、いいだろう。力を貸してやる。ただし、悪魔が人間と契約を結ぶのは暇潰し以外の何ものでもないと心得ろ。退屈だったら貴様の魂なぞひねり潰してすぐにでも帰るからな』
「こんな魔方陣も破れないくせに…」
『仕方ないの! 被召喚者は召喚主の造った防御結界に対して不可侵制約があるのっ!!』
家に入れてもらえない子供のように結界の壁を叩く。もちろん結界にはひびどころか叩いた振動すら伝わっている様子は無い。
『…もういいから…、とっとと契約を終わらせて今日は帰らせてくれ…』
「ああ分かった。契約には何が要るんだったか」
『我に名前を。アスモデウスは称号に過ぎない。悪魔は契約者に名前を与えられ、その名に縛られ使役される』
「そうか、名前………、 …… 」
『考えてなかったのか? おい、考えてなかっただろう絶対!』
「んー……、まあ………『チープトリック』で」
『それ今考えただろう貴様!!』
「重要なのは考えるのにかけた時間でなくその名が何を示すかじゃないのか? さっさと帰りたいんだろう、なあチープトリック」
『ああああああああもう貴様はぁぁぁあああ! なんかなし崩しに呼ばれてるしぃぃいいい』
今しがたチープトリックと名付けられた悪魔は、とうとうその場に座り込んでしまった。三つの頭がステレオで泣き続ける姿は、図体の大きさもあいまって非常にうっとおしい。
「じゃあそういうことだから、」
どうやら本気で泣いているらしい。暫く眺めていても変化が見られなかったので、召喚主は一つため息を吐くと、そう切り出した。グリモワを閉じて、深く被ったローブのフードを外す。
「俺はピーター=ヒューゴ・ルナライトだ。よろしく頼む、チープトリック」
『うぇぇ……?』
牛だか羊だが、とりあえず人ではないっぽいチープトリックの泣き声が、語尾を上ずらせながら徐々に収束していった。その目が捕らえるのは召喚主となったピーターの姿。髪の黄色も肌の色も、全体的に濃い目の色彩が儀式用の黒いローブによく映えている。まだ青年と呼べる若さなのだろうが、少々のやつれ具合が微妙に彼の年齢を曖昧にさせていた。今はきょとんとしてるが、他の表情をすればもっと様になる、気がする。
召喚主の姿を瞬時に分析し、チープトリックは一つの結論を出した。非常に好みであると。
『誰だ最初に儀礼時はローブ着用なんて言い出した奴は…』
「なにか言ったか?」
『いや、なんでもない』
チープトリックは立ち上がった。そこはかとなく機嫌も直っているようだ。
最後くらいはちゃんとしておこうと思ったのか、チープトリックはピーターに向き直り、静かに傅いた。魔法円が作り出す結界に旗や槍をぶつけることもなく、器用に足を折る。
『では、有事の際は貴様の名義で貴様が与えた我が名を呼べ。いかな時にも貴様の力となろう』
「ああ、わかった。…ついでにお願いしておきたいんだが」
『なんだ?』
「呼んで出てくるのはいいんだが、その姿はすごく邪魔………というか、場所を取るだろう。どうにかならないか?」
言い直されたものの、えらくひどい暴言を吐かれたような気がしたがチープトリックは聞こえていないふりをした。
ピーターの言い分は最もだ。今回天井に頭を打ったように、出るたびにどこかしらにぶつかっていては悪魔として格好がつかない。わざわざ指摘してくれたのだから、素直に従うことにする。
『そうだな…こんな姿はどうだ?』
チープトリックが持っていた旗を振ると、ふわりと翻り、チープトリックの巨体を覆い隠した。旗は振る前よりも面積が大きくなったようで、締め上げるようにチープトリックの体に巻きついて、シルエットを小さくしていった。旗が再び解けたとき、魔法円の外には羊の角を生やした妖艶な美女が立っていた。
『貴様の年齢に合わせてみた。どうだ、見まごう程の美女であろう。惚れてもいいんだぞ?』
濡れたような光沢の長い黒髪をかき上げ、自信たっぷりにチープトリックは宣う。色魔の呼ばれは伊達ではなく、彼には老若男女問わず人をその気にさせることにはかなりの自信があるのだ。
しかし。
ピーターはあからさまに嫌そうな顔をした。
いや、嫌そうという簡単な形容では表すことができない顔をしていた。
全体としては無表情に近い。表情筋にかける負担を一切失くしたような顔。そんな無味乾燥な顔に、コイツは何をやっているんだ、男が全員そういうの好きだと思うな、万人受けは所詮大多数にしか受け入れられないのだ、などと言いたげな目がついていた。
『え、えーと、……』
一言も発することなく、ただ視線だけで伝えられるメッセージに耐えかねてチープトリックはまたその場にうずくまった。
「姿は保留にしておくか。…次出てくるときに工夫してくれ」
『……はーい…』
地面にのの字を描きながら、チープトリックは徐々に姿を薄れさせて、消えた。消える直前に覇気のない返事を残して。
その後、ピーターが納得する姿を発見するまで、チープトリックは50回以上もあの視線を向けられることになる。



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