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14 2008 / 08
なんとなーくサーカスに居る月の兎さんや伯爵に関わることを書きたいと思ったのですが、出来上がったらその辺はほぼオマケのような感じになってしまいました。

ちょっとした月のお話。
主神やら天界の事が何一つ判っていないのに書いちゃっていいものやら。

ネメシスさんお借り致しました。口調とかさっぱりだったのでイメージで書いてしまい、ごめんなさい。




今宵も空は晴天で、胞星は青く輝いて見えた。
と、言ってもここには大気というものが無いため霞がかかることも、ましてや曇ることなどありはしない。
寂しい処だと言われたことがある。
彼の星によく赴くという同族は、彼の星のようには変化しないこの天が寂しい眺めだと言った。
たしかに彼の星から見たこちらは、霞、朧に霧隠れて美しく映る。
だがこちらから見た彼の星だって劣らぬ美しさがあると思う。
舞い蠢く星星の中で廻り続ける青き惑星。
大きく様変わりはしないが、同じで在り続けているわけではない。
変化は微かなものかも知れないが、それでも確実に存在しているのだ。


後ろにいる人物に同意を求めようとして振り返ると、相変わらずのジト目でこちらを見ており、言葉よりも先に嘆息が漏れた。
「…はあ。御茶漬けでもお出しすれば帰る理由になりますか?」
返事が返ってこない。怒っているのか、それとも生来の無口さ由縁のことなのかは定かではないが、恐らくはその両方なのだろう。
月の神はもう一度息を吐いた。こんなとき円達が居ればもっと簡単にお引取り願えるのだが、あいにく自分は受動的な神性ゆえ『追い出す』事には向いていなかった。
「言いたい事があるのなら、仰ったらどうです? ネメシス=クォール」
「貴神は…」
ようやくネメシスが口を開いた。
「何を考えている?」
問いかけの言葉は少なかった。だがその問いの答えは彼女が聞きたいであろう疑問全てに繋がるものだ。
ネメシスの金の瞳が真意を見極めようとこちらを見据えている。人の顔の美醜については非常に疎い月の神だったが、顔の造作が整っている人物の睨視は迫力があると思った。 
「何を、と云われても困りますね。今は胞星が美しいと思ってましたよ」
「ふざけるな!」
怒号と共に、ネメシスの周りに浮いていた赤い浮遊体が放射状に散った。肩をすり抜けていった浮遊体に、月の神は顔をしかめる。
「貴神も人間に裁きを下す命を受けているはず。なのに貴神は自らの務めを理由にそれを行わず、宮殿には貴神以外の者が居なくなっている。貴神は主神のご命令に逆らうつもりか?」
「兎達は知人の処にお泊りに行っているんです。神子のほうは知りません。幾ら息子とはいえあの子も一つの人格です。自分の思うように生きているのでしょう」
実際は、月の神は息子の居場所を知っていた。月を出て行った後、天界には寄らずにウィンクルムに下っていったのだ。元より人間への制裁に乗り気ではない自分から生まれたものとは言え、自分にはない行動力には少々感心させられた。
それにしても、沿神である兎達の所在まで気にしているということは、よほど主神は人間への制裁を焦っているのだろう。ネメシスのような神託を遣う神々にならいざ知らず、限定的なものを司る神にまで命を下すのはよほどのことだ。
「仮に逆らうつもりだったとして、それでどうします? 私の神格を剥奪しますか? 私以外にこの月を司ることが出来る者など居ない筈ですよ」
月は天界以上に変化の少ない場所だった。今、月の神が居る宮殿の縁側から見える光景は一面の礫地。黄味がかった灰色の大地があるのみだ。縁側から見える地には夜が無く、裏手に廻れば昼がない。
この変化のなさが神の身にも耐え難いらしく、今まで月の神の補佐などを希望して月に来た神は皆、軽く精神を患って天界へ帰っていった。
「まあ、逆らうつもりなど毛頭在りませんよ。私自身が赴くと云うのは出来ぬ相談ですが、主神には常に尊敬と畏怖の念があります。ですが……そうですね…、」
しきりにカリカリしている女神を見ていると、なんとなく自分の兎を思い出した。あれは心底怒っているというものではないが、彼女は心底ではどうなのだろう。
憤りであることは確かだ。ただ、月の神に向けられたものではない。
「考えていることは、恐らく貴女と同じだと思いますよ」
「なっ…!? それは……」
「思い当たる事があるのではないですか?」
ネメシスは押し黙った。
彼女も主神より命令を遣わされた身、なれば怠ける同胞を叱るよりも先に命令を実行するべきだ。怠惰を咎めるのならば、主神が伝令を遣わせばいいだけのこと。
わざわざ彼女が来ることに主神の意思が無いのならば、彼女は自らの意思でここに来たことになる。自身の言葉と行動の矛盾が、彼女の憤りの原因なのだろう。
「あの御方の尊き考えなど我々には知る由もないし、異を唱えることも出来ませんがね」
指摘しても良かったのかは判らない。月の神にも答えが出せぬものを、問いだけ示すのはいささか無責任だっただろうか。
「子はいずれ親元を去るものです。神も人も、それは変わらない」
「彼らの不信心もそうであると?」
「我らの心も…ね。それでも、貴女は命を受けるのでしょう?」
「当然だ」
予想通りの答えが返ってきた。
「主神の命を反故にすることは出来ない。…だが、そうだな、全てを受け入れることも出来ないだろう。下界に下り、人の子らのことを先ずはよく見てみることにする」
ネメシスの声から苛立ちが薄れていた。答えは示せなかったが、解法への手がかりくらいは出せたようだ。
間もなくネメシスは月を出て行った。彼の青き星へ、主神の命と自らの心を確かめるために。
離れ行く女神を見送ってから、月の神は再び星を眺める作業に戻った。ネメシスが出向いて見ると云うのならば自分はここから人を眺めていよう。今までそうしてきたように、これからもまた。
それが《月》の役目なのだから。



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