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このブログは企画系創作作品をまとめたブログです。主更新はオリキャラRPG企画になっております。
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贈り物話、副船長です。
レオンさん、春雨さん、キャプテンと、時雨君を名前だけお借りしました。




その日食事以外で食堂前を通るのは2度目だった。今日は頼んでいた海図用の製図用紙が届く日だったので、出納管理のレオンに付いて行き一度。
そして取りに行った帰りの2度目。食堂の入り口からも見える位置で、春雨がテーブルに突っ伏して眠っている。1度目に通ったときと変わらぬ光景だった。
春雨が仕事をしていないのはいつものことだったが、その日のマシューには何故だかその様子がひどく気にかかった。
食堂前で立ち止まっていると、入品チェックを終えたレオンが通りかかる。レオンはマシューの視線の先を見て、ため息を吐いた。
「倉庫に侵入してこないと思ったら、居眠りとはね」
「体調でも悪いのかな? 春雨、いつもと様子が違う気がするけど」
「オレにはいつも通りにしか見えないけどなあ」
呆れて食堂前を通り過ぎようとするレオンを、マシューは呼び止めた。
「あのさレオン、すごく古い本を買うにはどこを探せばいいかな?」
「本? 本ね………種類に寄るけどウチ…じゃない、商業ギルドに聞けばいいんじゃないか?」
「そうか…ありがとう」
返事が早いか製図用紙の束を抱えて小走りで立ち去るマシューの後姿に、レオンは何も言わずに首をかしげた。


後日。
春雨は甲板の、人気の無い階段横の端で空樽を机代わりになにやら忙しそうにやっていた。樽の両脇にはメモのような紙やインク壷の蓋が散らばっており、書き物をしているようである。
よほど熱中していたようで、マシューが近づいても気付く様子が無い。声をかけると、春雨は文字通り跳び上がって驚いた。
「ま、ままままマシューっ!? きょ、今日はまだ酒蔵に忍び込んではいないわよ!?」
「や、言われなくても解ってるよ。大丈夫」
(………“まだ”?)
若干気になるフレーズがあったが、気にしないでおく。
春雨は慌ててマシューに向き直り、周囲に散らばったメモを後ろ手で隠していた。驚いているのも、普段から言われているお叱りに対してよりも、今やっていることを知られたくないからのようだった。
「今日は怒ってる訳じゃなくてね」
こほん、とマシューは一つ咳をすると、手に持っていた一冊の本を春雨に差し出す。セピア色の皮装丁の、年季は入っているが綺麗な本だった。
「はいこれ、プレゼント」
「えっと…何の本?」
「航海術の初歩の初歩の本。僕も父から贈られていてね、父も祖父から貰ったと言っていたからウチに代々伝わってたんだろう。それと同じ本をね」
「航海術……」
ぱらぱらと数頁を流し見て、春雨は顔をしかめた。難しいことが書いてあるはずは無いが、専門書を初めて見たときの反応などそんなもんだろう。
「春雨は風を読むのが上手いから、ちょっと知識つければちゃんとした航海士になれると思うんだよ。知っているのと知らないのでは雲泥の差がある。知識は、動き回って埋め合わせられるものではないからね。知っているだけで役割が果たせるなら、春雨には丁度いいんじゃない?」
「あ、ありがとう…ございます…」
「暇なときにでも読んでよ」
それだけだから、とマシューは踵を返した。春雨が背に隠そうとしていることも気にはなったが、必死に隠し立てていることをわざわざ暴く必要もないだろう。
船室に戻ろうとすると、入り口の上からやたらテンションの高い声が落ちてきた。
「もーうそんな季節かよぉ。マァサ、オレにはなんか無いのー?」
「見られてたのか。どうしてキャプテンの分まで用意する必要が?」
「イヤーン寂しいぃ。贈り物の時期だからプレゼントしたんじゃないのかよぉー」
リーの言葉にマシューはたっぷりと時間を置いてから、ああ、と呟いた。
「そういえばもうそんな時期か。道理で最近肌寒いわけだ。すっかり忘れてたよ。皆には、今度改めて用意しよう」
「超楽しみにして待ってるぜぇーv で、」
船室へ入る扉分の段差を飛び降りて、リーは甲板の下に降りてきた。
「年中行事でもなく贈り物をしたのはどーいう風の吹き回しなんだ?」
「流石に今のままじゃまずいからね。船にも春雨にも。かと言って無理矢理何かやらせても、今までと変わらないだろう。先ずは出来ることをちゃんとさせようと思ったのさ」
それに、とマシューは続ける。
「自分が役立たずだって自覚している状況は結構と辛いものだからね」
「意味深だねぇー。でもぉ、オレの船に役立たずは乗ってないぜー? もうちょっとガンバってv って奴は居るけどなあー?」
「ありがとうよ、キャプテン」
一つやるべきことを終え、マシューはベルトに差していたキセルを取り出し火を入れる。火皿から立ち上る煙は、普段と変わらぬ紫丁香花の甘やかな香を含んでいた。


一方。
階段横のスペースにて『内職』をしていた春雨は、今しがた手渡された本の表紙をまじまじと見ていた。皮の表紙にタイトルが箔押しになっているが文字デザインのおかげで派手な印象は受けない。むしろ学術書特有の硬質さを箔押しの装丁が和らげているように見えた。保管環境は良かったのだろうが、流れた月日を感じさせるようにうっすらと天地が赤茶けている。もう少し本に関する知識を持った者が見れば、本文が印刷ではなく手描きの写稿であることが判っただろう。
「すっごい高そうな本…」
春雨は素直な感想を、素直に言葉にした。
この本を贈ってくれた時のマシューの言葉を思い出す。恐らく、何か盛大に誤解しているのだろう。
そろそろ大陸の習慣である親しい人や大切な人に贈り物をする時期が来る。春雨は時雨と一緒に、船の仲間達へのプレゼントとしてサプライズパーティを計画していた。企画案は春雨なので具体的なパーティの内容は春雨が考え、必要な物の調達などは二人で分担する。
この計画のおかげで、最近は酒蔵に忍び込む回数がぐっと減り、素面で居る時間が多くなった。計画を悟らせないために他の船員にちょっかいを出しに行く回数も減ったため、普段と比べれば調子が悪かったり落ち込んで見えるのかもしれない。
うーん、と唸りながら本を開く。本文の半ばほどを開いたから当たり前だが、書かれている内容は春雨の理解力から見れば異次元の様相を呈していた。一から読み始めるとしても、相当に時間がかかりそうである。真面目に勉強をしようという気にはならないが、せっかく貰ったからにはお礼を言って、軽くでも内容に触れた言を言うべきかとは思うが。
「………ま、いっか」
開いた本をぱたんと閉じて、春雨はひとりごちた。今はパーティの計画が最優先だ。本一冊ならかさばるものでもないし、マシューも「暇なときにでも」と言ってるから暇になってから読むことにしよう。
考えに一段落がついたところで、春雨は周囲に散らばったメモ用紙をかき集めて一纏めにし、貰った本の上に重ねた。船室で準備を進めているはずの時雨の様子を見に行くために立ち上がった。



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