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このブログは企画系創作作品をまとめたブログです。主更新はオリキャラRPG企画になっております。
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ファーとミッドガルドが登録された記念に夏っぽい話を。
と言っても作中では多分冬でしょうが。

なんつうか…うん、ペルシスがカワイソウですね。
恐らくプレイヤー視点で見たらいかにも嫌味っぽいえらそうなデフォ貴公子なんでしょうが…素は王城でも1,2を争う普通の人のような気がします。
ついでに蜻蛉の種族が判明したり…魔族ってか妖怪の類ですが。でも魔族ですよ。半分は。
作中で言われているミッドガルドの屋敷は、財団本部ではなくミッドガルドが王都内で買った私邸のことです。

正直に言うと、一番書きたかったのは最初の蜻蛉が語ってる怪談話の部分だけだったという。
稲川淳二リスペクトですよ。




「これは夜番してた衛兵から聞いた話なんだけどね。深夜、東棟ホールの扉前に待機していたら廊下の奥からひたひたと足音が聞こえてきたんだって。東棟は内政局の本部だから勤務時間外には人はいないはずでしょ? おかしいなと思った衛兵は足音の持ち主の確認に行ったんだ。分かるように足音立ててるから大した奴じゃないとは思うものの、もし物騒な輩だったら大変だからね。足音は扉のあるホールを曲がった先の廊下から聞こえてきていた。しかも、徐々にホールに近づいてきている。最初はもしかしたら見回りの兵士かとも思ったらしい。でも、それにしては妙に足音が軽い。ぺた、ぺた、って軽装といえど武装してる兵士の足音には聞こえない。衛兵は無性に恐ろしくなったんだ。見回りの兵士でも無さそうだし、先の通り、侵入者だとしたら足音を立てるのはおかしい。かといってその日は遅くまで東棟に居残っている内政局員の届けもない。およそ該当する者はいないのに、足音は確かにホールに近づいていた。まるでホールにいる衛兵を目標にしているみたいに。足音は既にホールの目前まで迫ってきていた。音の具合からしてあと5m…3m……。衛兵は意を決して廊下の曲がった先へ飛び出した。廊下にいるであろう人物を確かめるために。兵士の手に提げたランタンは、まず人物の足を照らし出した。ランタンの灯りを反射するような眩しい白い足。局員が着るワンピースタイプの聖服の裾、山吹色の袈裟、白いケープ。なんてことはない、ただの居残り局員だったんだ…安心しかけた衛兵は、自分の顔の高さまでランタンを掲げて凍りついた。」

「照らし出された局員の顔は、目も鼻も口もない、のっぺらぼうだったんだ!!」
くわっ、と目を見開いて蜻蛉は叫んだ。
だが周囲の反応は薄い。予想以上にオチが微妙だったため、反応に困っているようだった。
「くだらない」とミッドガルドの発した一言で、皆解呪されたように感想を述べた。
「のっぺらぼうっていうのがインパクト薄いですよね…」
「いっそ血まみれのほうが恐ろしいのでは?」
『普段から暗殺虐待なんでもござれで仕事をしているのに、そのようなものを怖がるのはどうかと思うが…』
「えー、皆ノリがわるーい」
蜻蛉がぶーたれる。もう日が落ちた室内では、彼は普段着ている遮光スーツを脱いでいた。
蜻蛉主催の怖い話大会に参加していたのはトリス、蟷螂、蚕蛾だった。トリスは城のメイドや外交で出会う諸外国の人々から聞いた怪談話をし、蟷螂は当たり障りのない怪談を無難に話そうとしつつもぶつ切りな喋りでさっぱり要領を得ず、蚕蛾は実際に見たり体験したホラーではなく単なるグロ話(首を撥ねた敵が走り回ったり、昔の傷口から蛆が湧いたり)をしていた。
思いのほか大会の主旨にそぐわない者が多かったため、蜻蛉がとっておき、と話したのがこれだった。
「というかノリ以前にもうちょっと静かにしていただけませんか」
処理済の書類を整頓していたペルシスが怪談話をしてる集団をたしなめた。
彼らが集まっているのは宰相執務室である。要するに仕事をしているミッドガルドの目の前で怪談大会をしているのだ。付き合いで話をしている3人はテンション下げ気味に務めていたが、主催者は落ち着く気は無いらしく。
「でも、一応実話なんだよー?」
絶好調だった。
蜻蛉の話にふと何かを思い出したのか、トリスが口を開いた。
「そういえばこの間…城のメイドも何人か、のっぺらぼうを見たと言ってたような気がします」
「私も祭務官から聞いた事がありますよ。あれは確か…内政局の方でした」
ペルシスも続いた。
にわかに執務室の温度が下がる。単なる話で済ますには、目撃者が多いのではないか?
「…そのさ、目撃者って何時見たとか何処で見たとか分かる?」
「何時…と言われると夜でしょうね。ランタンで照らし出されて顔がないのが解るという旨が共通してましたから。メイドたちの話だと、ランタンはのっぺらぼうの方が持っていてその光でパーツのない顔が見えるって」
「祭務官の方も夜だと言っていました」
「場所は決まって東棟です。他の棟では見ないらしくて…」
「トリスと同じです。他の局員の方も使いで東棟に寄ると見ると…」
話していくにつれて徐々に二人の語尾が小さくなっていった。喋れば喋るほどのっぺらぼうの存在が確かになっていくような気がした。
「これは居るのかも分からんね」
「いやいやいやいや」
声が弾み始めている蜻蛉に、ペルシスが即答で返す。魍魎類に対する恐怖というよりも、今後の話の流れに対する恐れを感じ取ってだった。
確かめに行こうか? 執務室に居合わせた誰もが蜻蛉は次にそう言うであろうと思った。
「そんなに気になるならば確かめに行けばいいだろう」
予想通りの言葉が響き。
予想外の声に皆が執務室奥の扉を見た。
意外な注目を受けたことに驚きながら、ファーレンハイトは奥の扉を閉めてミッドガルドに礼を言った。
「迷惑かけた、ミッドガルド」
「いつものことですから。私の迷惑を思うなら、もっとご自愛下さいませ」
「善処する」
執務室の奥は休憩室になっており、仮眠用のベッドがある。よく宰相執務室に入り浸っているファーレンハイトは体調を崩すとこの休憩室を利用していた。今も夕暮れ前に発作を起こしたファーレンハイトが横になっているうちに寝てしまい、起きてきたところだった。
「わ~い、王様が仲間に加わった~」
積極的に協力してくれる人が出てきて蜻蛉は嬉しそうだ。
ファーレンハイトの腕にひっついて「王様連れてってもいいですよね?」と上司に尋ねている蜻蛉に、蚕蛾と蟷螂がさっと挙手した。
『私は行かないぞ。今夜はミッドガルド様の屋敷の当直番だ』
「俺もインテグラから荷運びの仕事がある」
「え~…」
『今日暇なのはお前だけなんだから仕方がない。それでも4人居るんだから十分だろう?』
「ちょ、“4”人て」
ばっちり頭数に含まれた王甥二人が驚きの声を上げた。が、流される。
「ま、いっか。パーティの基本は4人だしね。案外バランスいいよね王様も王子様がたも」
「何の基本ですか何の」
「確かに前衛2人後衛2人でバランスはいいかもしれませんね」
『トリス様…怪談話相手に何戦う気になっているんですか』
皆がわいわいと掛け合いをやっているのを眺めながら、ファーレンハイトは笑みをこぼした。
「どう致しましたか?」
「ん? …ああ。こういうのを見るのも楽しいなと思って」
幼い頃のファーレンハイトには一緒に騒げるような人が周りに居なかった。傍に居るのは看護士兼護衛兼教育係のミッドガルドだけで、兄弟たちも父王に戒められていたせいかあまり会いに来る事はなかった。来てもファーレンハイトに気を遣ってなるべく騒がないようにした。
「正しい事だとは解っていたがやはり寂しかったよ。だから……うん、こういうのは悪くない」
「あなたが良いと思うなら何よりです」
「ところでミッドガルド」
「はい?」
ミッドガルドは書類のサインにアンダーラインを引くと、手を止めた。
「お前はどう思う? のっぺらぼうについて。本当に居ると思うか?」
「実害が無いのならば放っておけばいいのです。好奇心は有っても無くても人を殺しますよ」
「ふうん…」
最後の言葉は別として。
ファーレンハイトはのっぺらぼうに関する大体のことを把握した。
「何が出るのか楽しみだ」
あいかわらず蜻蛉にからかわれているペルシスを眺めながら、怪談の検証にふさわしい深さの夜が来るのを待った。


「ということでー、内政局本部の東棟2階中央ホールに来ていまーす」
「やっぱり昼間来る時とはだいぶ雰囲気が違いますね」
ホールの階段前でわかりやすくハイテンションな蜻蛉。トリス=トリスは落ち着いているように見えるが普段とは違う建物内の空気に少々浮かれているようだ。ファーレンハイトは特にいつもと変わらなかった。
「そういえばペルシスは城に来たばかりの頃、廊下に飾られていた肖像画を怖がっていたことがあったな」
いきなり名前を呼ばれてペルシスはビクッと大きく動きを止めた。どうやらこの中で一番肝試し向きなのはペルシスのようだ。
「ゴースト系のモンスターは平気なのに、怪談は苦手なのか」
「モンスターはなんだかんだで倒せますから」
ファーレンハイトの素朴な疑問に答える声すら若干の震えが含まれた。
「無理しないほうがいいんじゃないか?」
「大丈夫です。このくらいで逃げるような私じゃありません」
蜻蛉にからかわれたのがよっぽど癪だったのだろう。ペルシスは震えが混じったままの声で強がっていた。
「…へ、陛下は平気そうですね」
「ん? ああ。小さい頃、発作が起きるたびに枕元に立っていた死神の恐ろしさを思えば幽霊の一つや二つ恐怖の内に入らん」
ペルシスには理解されなかったようで、現状の恐怖のせいなのか反応し辛いからなのかは判らないが複雑な表情をしている。
そんなペルシスの表情の背後、手持ちの灯りでは照らされない廊下の薄闇を横切っていく人影が見えた。
(…ん?)
気のせいだろうか。そう言われてしまえばそんな気もするような微かな揺らぎだ。
「蜻蛉」
「はい、王様?」
そろそろ出発しようかと意気込んでいた蜻蛉に尋ねる。
「仕込みはしてないだろうな? 俺たちを怖がらせるために誰かを待機させていたり」
「してませんよう、そんなこと。今夜非番なのぼくだけですもん。てゆーか仕込むならぼくがおどかし役やりますって」
確かに壁男の蜻蛉本人が驚かしたほうが良さそうではある。
「それもそうか…」
「そーですよ。じゃあ行きましょうか。しゅっぱーつ!」
元気よく号令をかけて、先頭の蜻蛉が歩き出した。トリス、ペルシスと後に続く。
苦笑する衛兵に会釈をしてファーレンハイトも後を追った。
一行は噂ののっぺらぼうが頻出するという内政局本部の廊下を進んでいった。この階は資料室が主なため他の階に比べ生活感が薄く、人の居つかぬ家屋独特の空気があった。
当然と言えば当然だが、人の居ない深夜の屋内は非常に暗い。廊下は片側に各部屋の扉が、もう片側に窓が並んでいるが曇天では差し込む月明かりも無く。
単純に思ったことと言えば何故先頭の蜻蛉ではなく次順のトリスがカンテラを持っているのかということだった。
(ああ、蜻蛉は夜目が利くのか)
魔族は明り無しで夜襲をして来るから対応が大変だと騎士団長が言っていたのを思い出す。
先頭で、両手が空いていればちょっとした細工をするのはわけないだろう。蜻蛉に限ってただ夜の城内を歩き回るだけで終わるはずが無い。
考えながら歩いていると、前を歩くペルシスとぶつかった。歩く速度が速かっただろうか、そう思ったが前を見ると蜻蛉が立ち止まっていた。それに倣ってトリスとペルシスも止まったようだ。
「どうした?」
「い、今…そこの部屋から物音が。陛下は聞こえませんでしたか」
「いや」
考え事をしていたから聞こえなかった、と続けようとしたがやめた。今は必要の無い情報だ。
三人が警戒している部屋は進行方向のすぐ手前にある資料室。普通に考えて居残りの局員が居るような場所ではない。
「気のせいじゃ…」

ギ ギギギ……

言いかけたファーレンハイトの声に重なって、木板に爪を立てたような音がその部屋から聞こえてきた。
「…ないな」
今度はファーレンハイトにも聞こえた。他の3人はその前にも聞いているのだから二回目か、空耳というには証言者が多い。
「部屋の中に風が吹き込んだとか」
「風の音には聞こえんが。というか資料室には窓が無いはずだ」
「誰か居ますか?」
戸に問いかけるようにトリスが発した。
もちろん返ってくる返事はない。
「今日は居残りさんは居ないよ。念のため調べたけど」
若干トーンダウンした声で蜻蛉が応えた。彼も想定外ということだろうか。
「い…いい加減にして下さいっ!!」
ペルシスが吠えた。
突然のことに面食らった3人に構わず、ペルシスはトリスの持っていたカンテラをひったくって怪音のする資料室の前まで早足で向かい、戸の前で蜻蛉を睨みつけた。
「そうやって人を怖がらせて楽しいですか!? 子供じみた真似をして…この部屋の音も、どうせ貴方が仕込んだんでしょう蜻蛉!!」
「えーと…」
「どんな仕掛けが知りませんが、こんなもの、怖くもなんともありません!」
「あ、王子様…」
言葉の勢いに合わせてペルシスは戸を勢いよく開けた。蜻蛉の仕込みを暴いてやろうと部屋を照らすようにカンテラを掲げる。
その瞬間、資料室から黒い影がペルシスの顔に飛び付いた。
「―――――ッっ!!?」
声になっていない叫びを上げて。倒れたペルシスが動かなくなった。
「そこにはメネスが…てもう聞こえてませんよね」
「ああ、カンテラがっ!」
「…ええと………大丈夫かペルシス」
ファーレンハイトは色々と言いたいことはあったが、弟にすらカンテラよりも心配の順位が低く扱われているペルシスを色々な意味で憐れんだ。
トリスが回収したカンテラで資料室を照らすと、本棚と戸の内側に引っかき傷があった。傷の高さからしてメネスがつけたものだろう。
「さっきの音はメネスの仕業だったんですね」
「問題はメネスがここに居たのは誰の仕業だったのかだな。…蜻蛉」
「あー…はい、ゴメンなさい……」
面白くなればいいと思って仕込みました、と蜻蛉は素直に認めた。まさかペルシスが気絶までするとは思っていなかったようだ。
「他に仕込みは?」
「ありませんよう。する時間もなかったですし。ここでちょっと怖がらせて、あとは特に何も無く廊下の端まで行って終わる予定だったんです」
「本当だろうな?」
「本当です!」
「そうか…」
ファーレンハイトはため息を吐いた。ひとまず気絶してしまったペルシスが頭などを打っていたら危険なので、驚かした蜻蛉が一刻も早く医務室に連れて行くように命じた。予想以上の事態に反省したらしい蜻蛉は、ペルシスを抱えてきた道を戻っていった。
メネスも蜻蛉が去ると後を追うように廊下の奥に消えた。引っ掻き後の残った本棚と戸は…明日にでも内政局長に言っておくことにする。
「じゃあ、行こうか」
「えっ」
残ったトリスが立ち尽くしていると、ファーレンハイトは廊下の奥を示した。先程まで蜻蛉が進もうとしていた先をだ。
このまま終わらせるつもりだったということは、少なくとも蜻蛉はのっぺらぼうを本気にはしていなかったということだ。だが、彼が言ったように目撃者があまりにも多い。のっぺらぼう本人が居なかったとしてもそれと勘違いするような何かはあると考えられる。
ファーレンハイトはそれに興味があった。
「お前も帰るか?」
「………いいえ!」
少しの間の後、トリスは一段と強く返事をした。今この場でファーレンハイトを守ることが出来るのは自分しか居ない、と考えたのかもしれない。
「では行こう」
トリスから譲り受けたカンテラをかざしながらファーレンハイトは再び歩き出した。




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